パート6. そして2vs12 笹浦耕、伊隅賢治、渡部亜希穂[16:30]

徳永の死、笹浦の死。その美しい両極端は、今のボクにはまるで想像もつかないような真実を明かしてくれることだろう――高校2年生、徳永準の自殺予告メールがネットに流出しました。頭脳派、お人好し、リーダー気取り、犯罪者まで入り乱れて彼と彼を導く殺人鬼(?)〈17〉に迫ります! 15人24時間の大晦日から始まる群像サスペンス長編! 読みはじめたら止まれない、ライトノベル史上〈もっとも長い一日〉をご堪能ください。(イラスト:箸井地図)

笹浦耕[16:30]

「笹浦! 徳永……」
 をつかまえてくれ! みてーなことを叫んだのは伊隅のやつだった。
 けど、かえって裏目に出た。
 放水の彼方に突如出現したあのド阿呆は、くるっと回転するや、すぐ後ろまで迫ってた伊隅を突き飛ばした。つーか伊隅が勝手にひっくり返ったぽかったけど。そのまま階段を、やつはものすげー勢いで駆け降りる。
「うわわっ──」
 伊隅が倒れる、オレが階段へ突進する、徳永の背中が林の中へ消えていく、それがぜんぶいっぺんにおこって、しかも直後にオレのすねがすげー悲鳴をあげた。
「いでえっ!」
 伊隅の大バカたれ、オレにもろにぶつかってきやがって、ほとんどタックルだよ! こっちもバランス崩してすっ転んで、階段から転げ落ちる寸前とこで二人して知恵の輪状態。
「バカどけこらてめえ!」
「ご、ごめん!」オレの下から、泣きそうな声。「ボ、ボク徳永を追ってて!……」

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伊隅賢治[16:30]

「ボク、徳永を追ってて、それで──」
「説明いいから! 来い!」
 笹浦の体重と熱気がボクの上から消える。やつは双眼鏡を握ったまま猛然と階段を駆け降りる。ボクは苦笑を抑えることができない。ああ笹浦。おまえこそは根っからの行動者に違いない。ボクが半時間を費やして考えついた見事な言い訳の数々を、聞こうとすらしない。
 ただ懸命に走る、走る、走る。狩りを覚えたばかりの幼い狼のように。
「あ、くそ! いねえ!」
 正面は下り坂、その先は十字路だ。徳永の姿は──どこにもない。右の神社へ逃げたのか、それとも左奥の坂を越えて遊歩道へむかったのか。
「笹浦、他の連中は? みんなで包囲する計画じゃ──」
「うっせえ! しゃべってねえで連絡……えいくそ、これ使え!」
 やつは自身の携帯をボクに投げてよこし、同時に正面の坂を駆け降りる。なんという信頼の証。そして瞬時の判断力。そう、ボクは他のメンバーのアドレスも電話番号も知らない。ずっと返信を怠っていたし、連絡の中枢はおまえや〈トウコ〉が担当していたんだから。そしてボクよりはおまえのほうが足は速い。となれば連絡役はボクが担当するのが合理的だ。
 大したやつだ、笹浦、おまえというやつは。徳永とはまるで違う、けれど同じくらいに興味深い対象だ。機会があれば、おまえの死の瞬間も是非観察してみたいところだ。ボクは自分の欲望が肥大していくのをはっきりと感じる。危険な兆候だ。けれど、ボクにはボクが止められない。ボクの奥底から湧き出てくるものを。

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15×24(イチゴーニイヨン)link two 大人はわかっちゃくれない

新城カズマ

高校2年生、徳永準の自殺予告メールがネットに流出しました。彼を救うべく懸命に彼を探す捜索隊、否応なしに巻き込まれる者、別の思惑を抱くもの、そして殺人鬼まで……!? 15人24時間の大晦日の長編群像サスペンス、こっからが本番です! 読み...もっと読む

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