パート6. そして2vs12 笹浦耕、温井川聖美、枯野透[16:30]

寝不足も風邪も関係ない。全速力で砂利道へ。頼む、間に合ってくれ!――高校2年生、徳永準の自殺予告メールがネットに流出しました。頭脳派、お人好し、リーダー気取り、犯罪者まで入り乱れて彼と彼を導く殺人鬼(?)〈17〉に迫ります! 15人24時間の大晦日から始まる群像サスペンス長編! 読みはじめたら止まれない、ライトノベル史上〈もっとも長い一日〉をご堪能ください。(イラスト:箸井地図)

笹浦耕[16:30]

 ケータイのデジタル表示が変わる。双眼鏡が汗ですべる。
 どこだ。白のダウンジャケット。死にたがりのド阿呆野郎。どこだ? どこにいる?
〈状況に変化は?〉マーチの手信号。
〈ないってば〉適当に返す。
 調子はずれのサックスの音。舌がムズムズする。喉が狭まる。渋谷で買ったアクエリアスをつかんで、一口、二口。
 ひとりぼっちの白のダウン──ひとりぼっちの白のダウンだってのに! いねえぞ、ちくしょう!
 アクエリアスからケータイに持ち替え。
「マリエ、状況は?」
『変化なしよ。あ、それから笹浦』
「んぁ?」
『下の名前を呼び捨てにするの、やめてもらえる?』
「………………」このくそ忙しい緊急時に何じゃこいつは!「いいけど。んじゃ西さん」
『さん付けは要らないわ。西で結構』
「西」
『なによ?』
「ってべつに。そう呼べって言ったじゃん」
『用が無いなら話を引き延ばさないでちょうだい。電池の無駄だわ』
 切りやがった。
 ……とりあえず結論。徳永の件とファブリの件がぜんぶ片づいて、しのぶさんと再会できて、妹さんにはお騒がせしましたって謝って、しのぶさんと素敵な一夜を過ごしたら──その翌日に茨城まで行って、このいけすかねー女にまじ蹴り入れちゃる。車椅子とか障害者とかそーゆーの関係なし。普通にキックかます。いやほんとまじで。
 再度アクエリアス。くそ、冷たすぎだ。口に含んだとたんケータイが震える。やべ、ちょっと鼻に入った。
「ぶふぁ?」
『やあギルバート君』
 ……もう怒る気もしねーよ。
『遅くなってもうしわけない、もうそろそろ徳永君が現地に到着しているはずだよ』
 双眼鏡、右旋回。
 駅前交差点──歩道──自然文化園正面入り口──信号機の下のマーチ──また歩道──林の散歩道──やっぱいねーじゃんかよ!
『それでだね、君にやってもらいたい仕事というのは……』  次の瞬間、オレの口からおもいっきり噴き出たアイソトニックな水分補給飲料が、キラキラと見事な放物線を描いた。

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15×24(イチゴーニイヨン)link two 大人はわかっちゃくれない

新城カズマ

高校2年生、徳永準の自殺予告メールがネットに流出しました。彼を救うべく懸命に彼を探す捜索隊、否応なしに巻き込まれる者、別の思惑を抱くもの、そして殺人鬼まで……!? 15人24時間の大晦日の長編群像サスペンス、こっからが本番です! 読み...もっと読む

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