パート5. 大人はわかっちゃくれない 西満里衣[15:30]温井川聖美[14:15−]

そして唐突にあたしは気づく。というよりも、憶い出す。徳永の心中相手が、誰であるのかを――高校2年生、徳永準の自殺予告メールがネットに流出しました。頭脳派、お人好し、リーダー気取り、犯罪者まで入り乱れて彼と彼を導く殺人鬼(?)〈17〉に迫ります! 15人24時間の大晦日から始まる群像サスペンス長編! 読みはじめたら止まれない、ライトノベル史上〈もっとも長い一日〉をご堪能ください。(イラスト:箸井地図)

西満里衣[15:30]

「メール!」
 わたしの声、直後にノブとマーチがケータイをひっぱり出す。ササウラのやつからだった。

15:30:11
件名:──
徳永のあらわれる場所
がわかった。4時半に
井の頭公園だ。捜索隊
から脱けたい奴は、い
ま言ってくれ。脱ける
機会は、この先たぶん
ないから。

 なんて失礼な言い草! どこでどういう情報を手に入れたか知らないけど、脱けるの脱けないのって、どうしてササウラのやつが決めるのよ。いつのまにリーダーになったつもり? べつにわたしがリーダーってわけでもないけど。
「みんなにも来た?」
「うん」
「ああ」マーチが顔を歪める。「なんだこいつ、偉そうに。リーダーでもねえくせに」
 わたし、はっとする。けれど何も言わない。
 理由は自覚してる。わたしの中に小さな疑惑があるせいだ。さっきの、離れに移動しようって提案した時から。なにも『証拠物件』を運んで来なくても、わたしだけが離れに移ってもよかったはず。なのにマーチは「駅のそばのほうがいい」。そこで議論終わり。
 そもそも移動のことをいうのなら、むしろわたしとトウコさんが離れに残るほうが効率的だった。認めたくないけど、わたしの車椅子と都内の交通機関はまだまだ相性が悪い。事の是非じゃなく、事実として。中野駅の一件がそれを証明してる。現実は不完全だけど、わたしだって完璧じゃない。それを認められないほど非現実的な人間じゃない。
 ここは、わたしを後衛バックス
 他の皆を前衛フォワード
 そうすべきだった。
 なのに、あの時のマーチ。ひどく感情的で一方的。深く考えようとしない態度。それにトウコさんのことを「動かないほうがいい」って言った、あの口調。なんだか恨みでもあるみたいな感じだった。
 マーチはまだノブにむかって怒鳴ってる。両手をふりまわして、早口で。
「──だいたい、どこから仕入れた情報なんだ? 徳永の出てくる場所がわかるんだったら、どうして今いる場所がわかんねえんだ?」
「そんなこと言われても俺……」
「いいんだよ今のは答えなくても! 修辞的疑問てやつ!」
「あのさ、俺思うんだけど、ササウラにメールで訊いてみれば……」
「わかってるよ、それくらい! 今やってるとこだよ。ていうか、おまえやれ!」
 何かが変。何かが違う。わたしの中のマーチ像と、目の前の本人の言動とが、うまく結びつかない。推理を披露したさっきの彼と今の彼、まるで別人のよう。

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15×24(イチゴーニイヨン)link two 大人はわかっちゃくれない

新城カズマ

高校2年生、徳永準の自殺予告メールがネットに流出しました。彼を救うべく懸命に彼を探す捜索隊、否応なしに巻き込まれる者、別の思惑を抱くもの、そして殺人鬼まで……!? 15人24時間の大晦日の長編群像サスペンス、こっからが本番です! 読み...もっと読む

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