前編】詩人として食べていけたら、それはとても素敵なことだなと

詩人、菅原敏。2012年、サンフランシスコの出版社PRE/POSTより逆輸入という形で、詩集『裸でベランダ/ウサギと女たち』を出版し、各方面で「キザすぎる!」と話題になりました。それから2年の時を経て、彼が次に取りかかった作品は「詩人天気予報」。今年1月7日から毎夜YouTubeにアップされる彼の動画は、じわじわとファンを増やしています。もともとは会社員だったという彼は、いったいなぜ今、詩人になろうと思ったのか。cakes代表・加藤貞顕がインタビューしました。

まずは詩以外も楽しんでもらいたい

加藤貞顕(以下、加藤) 菅原さんとは知人を通して、知り合ったんですけれども。詩人を紹介したいと言われて、最初は「えっと、詩人……?」って思ったんです(笑)。でも、そのメールに朗読会の動画がついていたんで、それを見たらめちゃくちゃおもしろくて。あのライブ動画はどこのですっけ?

菅原敏(以下、菅原) あれはビームスでやった朗読会ですね。

加藤 おしゃれな会場に、おしゃれな女の子がたくさん来ていて、そこで詩の朗読というのか、なんとも言えない独り語りがあって、笑いが起こっていて。今まで見たことのある朗読会とは、まったく違うものですよね。だいぶ画期的だと思うんですけど、あのスタイルはどんな意図でやっていらっしゃるんですか?

菅原 まずは、朗読の部分だけを楽しんでもらうというよりは、来てもらった時間を楽しんでもらいたいと思っているんです。独り語りもあり、朗読もあり、歌もあり、自然な流れで一つのステージというか。詩の朗読会というと、粛々と黙って聞かなきゃいけないみたいなイメージがあると思うんですよね。

加藤 そうですね。真面目なイメージがあります。

菅原 そこを変えたいなっていう気持ちがあったんです。


会社員をしながら詩人をしていることが、嘘をついている気分になって

加藤 最近、人に会う機会がある度に、菅原さんのライブとか天気予報の動画を見せているんですよ。

菅原 うれしいですね〜。

加藤 いや、相当おもしろいですよ。僕もあれを見て、詩のポテンシャルに気付かされました。
ところで、菅原さんはそもそもなぜ詩人になったんですか? 詩人になる前は会社員だったって伺っているんですけど。

菅原 そうですね、丸5年間Yahoo! の社員として、トップページの編集をしていました。その前は、フリーでコピーライターを4〜5年くらい。

加藤 もともと詩がやりたかったけど、そういうのをやっていたってことですか?

菅原 じつは、その前はずっとジャズバンドをやっていたんですよ。わりとニッチな音楽だったので、食って行けるようにはならないだろうなっていう気持ちにだんだんなってきて。仕事も音楽活動もどっちも中途半端で、パッとしなかったんですよね。

加藤 なるほど。バンドでは何をやっていたんですか?

菅原 ボーカルとサックスです。詩も曲も全部自分で作っていましたね。そのバンドのライブで、朗読を始めるようになったんです。最初は真っ当に吹いたり、曲歌ったりしていたんですけど、いつの間にか、詩の朗読や語りが全般を占めるようになっていって(笑)。お客さんの反応が全然違ったんですよね。

加藤 ああ、歌よりも、詩の朗読とか語りのほうがウケたんですか?

菅原 ジャズのクラブでやっているのに、笑いが激しく起こるというか(笑)。当時、バンド自体にはかなりの時間を費やしましたね。

加藤 バンドでは食べて行けないということで就職というのは、わりと普通の、よくある話だと思うんです。でもその後、詩のために仕事を辞めて、職業として「詩人」になったんですよね。それって、かなり思い切ったことをされてますよね。

菅原 会社員をしながら、詩人として活動をしていることに対して、なんか嘘をついている気がしていたんですよね。

加藤 ああ、会社員時代もすでに詩をやっていたのか。

菅原 そうなんです。最初の詩集『裸でベランダ/ウサギと女たち』は、会社員時代に出していて。

加藤 この本、ちょっと変わった出版社ですよね?

菅原 アメリカのサンフランシスコを拠点にしている、クレイグ・モド氏が運営をする出版社です。彼はもともと、俺がジャズバンドをしている時代に、一緒のバンドでドラムを叩いていた一人なんです。当時は東京を拠点として活動をしていたので。

加藤 なるほど、じゃあその人との出会いが大きなきっかけになったというわけですね。

菅原 彼が向こうに戻ってから、なぜか電子書籍とか出版の世界で有名になっていて(笑)。そこで、俺もずっと朗読してきた詩のストックがあるから、一冊の本にまとめて、それで活動した方が絶対に未来があると言われたこともあって。

加藤 アメリカの出版社で本を出すって、すごく珍しいですよ。


一人くらい、こんなことやって食える奴がいてもいいんじゃないかって

加藤 で、結局、仕事は詩人だけにしようと思ったんですか?

菅原 詩人という職業がいちばん素敵な職業だな、と俺は思っていて。ずっとこう、詩人として生きていければ御の字だな、と思っていたというか。激しく金儲けをしたりとか、すごいロックスターになったりとかじゃなくて。詩人としてやっていけるってだけで、ちょっと素敵なことだなと思っていたんです。周りにもいなかったし。

加藤 詩人で食べている人なんて、谷川俊太郎さんしか知らないですよ(笑)。

菅原 たぶん俺も彼しか知らない(笑)。

加藤 でも、そこをやろうというのは。

菅原 ほかの仕事をしながら詩を書くのも、もちろん素晴らしいことだと思います。ただ俺はまわりに「詩人の菅原敏さんです」と紹介されるたびに、なんだか嘘をついている感覚が徐々に募ってきてしまって。だから、一人くらい、こんなことをやって食える奴がいてもいいんじゃないかって思ったんです。

(次回へ続く)

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YouTube動画で話題の『詩人天気予報』をラジオ番組にしようと、菅原敏が『bayfm78 PROJECT ROOM』にてクラウドファンディングにチャレンジ中。詩人は1ヵ月の番組を持つために、150万を集められるのか!?

▼プロジェクトページはこちら
https://greenfunding.jp/projectroom/projects/673

この連載について

いま詩人として生きていく—詩人・菅原敏インタビュー

菅原敏

詩人、菅原敏。2012年サンフランシスコの出版社PRE/POSTより逆輸入という形で詩集『裸でベランダ/ウサギと女たち』を出版。各方面で「キザすぎる!」と話題になった作品から2年の時を経て、彼が次に取りかかった作品は「詩人天気予報」。...もっと読む

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コメント

limelight0907 詩人として生きていけたら https://t.co/ss6LzJPT3P 約2年前 replyretweetfavorite

shimodakohei 詩人、 http://t.co/zoECJeQjOA 2年以上前 replyretweetfavorite

sugawara_bin ありがとう:) 詩人・菅原敏インタビュー|菅原敏 @sugawara_bin |cakes(ケイクス) https://t.co/BwHSBJ8kvG” 4年弱前 replyretweetfavorite

bleuciel0629 いますごくはまってる、きてる。ライブ行こうと思ってます! 詩人・菅原敏インタビュー|菅原敏 @sugawara_bin |cakes(ケイクス) https://t.co/sLANDf0M3S 4年弱前 replyretweetfavorite