アベノミクスで株価の上昇が続き、証券会社には口座開設依頼が殺到しています。しかしその一方で、たんなるミニバブルだと半信半疑のひともたくさんいます。
私たちは、アベノミクスに対してどのような資産運用戦略で臨めばいいのでしょう? 実は答えは、ものすごく簡単です。
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未来は誰にもわからないものの、戦争や内乱などとちがって、経済的な出来事は、将来どのようなことが起こりそうか、そのシナリオをかなり限定することが可能です。アベノミクスが引き起こす日本経済の未来は、原理的に以下の3つしかありません。
①楽観シナリオ アベノミクスが成功して高度経済成長が再び始まる
②悲観シナリオ 金融緩和は効果がなく、円高によるデフレ不況がこれからも続く
③破滅シナリオ 国債の暴落(金利の急騰)とハイパーインフレで財政は破綻し、大規模な金融危機が起きて日本経済は大混乱に陥る
さらに、もっとも不吉な破滅シナリオが現実のものになったとしても、ある朝目覚めたら一万円札が紙くずになっていた、などということは起こりません。経済には強い継続性(粘性)があるからです。日本国の財政破綻(破滅シナリオ)は、次のような順番で進んでいきます。
第1ステージ 国債価格が下落して金利が上昇する
第2ステージ 円安とインフレが進行し、国家債務の膨張が止まらなくなる
最終ステージ(国家破産) 政府が国債のデフォルトを宣告し、IMFの管理下に入る
書店に行けば「国家破産」のタイトルのついた本が並んでいます。日本国が抱える1000兆円の借金を考えれば、誰も財政破綻の可能性を否定することはできません。しかし、ここで指摘したいのは、別の単純な事実です。“危機”は第1ステージから第2ステージ、最終ステージへと悪化していくのですから、経済的な混乱に適切に対処して資産を守るための時間は十分にあります。
ギリシャの経済危機にしても、財政の健全性が危ぶまれてから国家がらみの粉飾決算が発覚して国債価格が急落するまで、2年以上が経過しています(末尾のコラム参照)。慌てる必要はどこにもないのです。
破滅シナリオは3段階で進行する
次に、①楽観シナリオ、②悲観シナリオと、③の破滅シナリオの第1ステージまでは、普通預金こそが最適な資産運用戦略になることを説明します。
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