二の腕にタトゥーを入れているドイツ前大統領夫人ベティーナ・ウルフ氏 〔PHOTO〕gettyimages
ドイツの若者の間で常識となりつつあるファッションタトゥー
今回、日本滞在が長くなりそうなので、フィットネススタジオへ通おうと思い、帰国早々申し込みに行ったら、会則に「刺青、ファッションタトゥーのある人」、「性同一性障害の方」などは、クラブが別途定める審査を受けなければいけないと書いてあった。
私は、もう15年ぐらい、ドイツでスタジオに通っているが、若い人たちの間では、ファッションタトゥーはすでにほぼ常識だ。個人的には、なぜ、タトゥーの何がそれほどよいのか理解はできないが、現実を述べるなら、会員の3分の1ぐらいはタトゥー族だ。
スポーツスタジオなので、女性の裸は努力しなくても目に入るが、とにかく別になんてことのない普通の女性が、腕やら足やら背中にアクセサリーを付けるようにタトゥーを見せている。
ただ、クオリティーは杜撰なものが多く、図案は稚拙だわ、滲んでいるわと、お世辞にもきれいだとは言えない代物も目に付く。大きなお世話だとは思うが、ときどき見ていて気の毒になる。
ドイツでタトゥーがいかに普通になっているかというと、かなりなものだ。前大統領ヴルフ氏は、すでに収賄その他の容疑で失脚してしまったが、彼の夫人も二の腕にワンポイントのタトゥーがあった。
歌手ではなく曲がりなりにもファーストレディであるから、さすがにびっくりした国民も多かったが、大きな声で非難する人はいなかった。ドイツ社会はリベラルになり過ぎていて、何でも許容しなければいけない雰囲気に押されている。身なりは、不潔でなければ良いのである。
これはタトゥーではないが、先週、フランクフルトから列車でシュトゥットガルトに戻った時、金髪に染めたモヒカン刈りの若い車掌が検察に来たので、これにもかなりびっくりした。新幹線の車掌がモヒカン刈りで現れたなら、日本人は皆、腰を抜かすだろう。
一緒にいたドイツ人の友人に、「彼、銀行でも雇ってもらえるかしらね」というと、「微妙ね。でも、雇われた後でモヒカン刈りにしたなら、それを理由に解雇はできないと思う」と答えた。
そんな国に住んでいるもので、日本で温泉に行き、「刺青、タトゥーの人、入浴お断り」と書いてあると、私の頭には、暴力団員ではなく、ジムの女の子たちの姿が目に浮かぶ。そして、彼女たちが温泉に入れないとしたら、何だかおかしいと思ってしまう。
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