萩原俊矢(ウェブデザイナー)→須藤健一(国立民族学博物館)Vol.2「美には種類があるのですか?」

今回のインタビュアーは、「カンバセーションズ」のサイトデザインを手がけるcookedのメンバーであり、普段はフリーランスのWebデザイナーとして活動している萩原俊矢さん。そんな萩原さんがインタビューするのは、大阪・国立民族学博物館(通称:みんぱく)の館長で、文化人類学者の須藤健一さん。来たる2月19日からは東京・国立新美術館で『イメージの力―国立民族学博物館コレクションにさぐる』を開催予定の須藤館長に、萩原さんが独自の視点で迫ります。

「美」には種類があるのですか?

Q. 民族学というのは、昔のものを収集することだと思っていたのですが、改めて「みんぱく」の展示を見ると、2012年に新しく入ったものなども展示されていて、いまこの時代というのも民族学の対象になっているんだと感じました。

須藤:「みんぱく」が74年にできた時に、世界中から当時使われていたものを集めてきたんですね。その時々の生活の中で使われているものを集めるという意識が我々にはあるのですが、皮肉なことに70年代に自分たちが集めたものが現在、現地からはすでになくなっていて、現地に博物館を作るという時に、レプリカを作る資料にしたいという問い合わせがあるんです。先ほど話した島の人たちのように古いものも新しものも両方持っていればいいけど、便利なものだけを残して、古いものは捨ててしまうことが多いですよね。

Q. 「みんぱく」には膨大な量の収蔵品がありますが、どのように集めているのですか?

須藤:うちにいる60人前後の研究者たちが世界各地から集めています。「みんぱく」には現在33万点の収蔵品があるのですが、開館から35年が経つので、平均すると年に1万点収集していることになります。ただ、開館当初は一気に集めましたが、現在は年に数千点程度だと思います。いま「みんぱく」の展示を大改編しているのですが、その中でこういう展示をしたいということを各地域の展示チームが検討しています。モノとして展示する時にどんなものがいいのかを考えながら、その時々で必要なものを集めています。

Q. ちなみに、同じ万博公園内には大阪日本民芸館もありますが、「みんぱく」との違いはどんなところにあるんですか?

須藤:大阪日本民芸館にあるものは、著名な作り手がつくった”お宝”なんです。明確な作家名があり、作品としての価値が評価されているものです。一方で我々は、簡単に言えば誰でも作れるようなものを集めているわけです。ただ、例えばアボリジニが描いた絵で、美術市場で高値が付けられているようなものも収集していて、これらは西洋文化の中にアボリジニが入り込み、自分の存在を示しているという動きを紹介するためのものなんですね。

Q.アート作品としてはなく、あくまでも文化人類学/民族学的な側面にフォーカスしているということですね。

須藤:現地の人たちがグローバリゼーションにどう反応し、外来のものを受け入れ、利用しているのかを示す大事な例です。これらを通して、アボリジニのアートと、ピカソの作品は同じ美なのかどうかを問いかけるわけです。「美しいもの」「良い音楽のリズム」といったものの背後には人類共通の何かがあるんじゃないかと。我々は原始的で未開なモノを持っている博物館だと言われてきましたが、2月に東京の国立新美術館に700点の収蔵品を持って行って展示するんです。これまで美術館というのは西洋の著名な作品を展示する場所で、博物館は美とはおよそ遠いものを展示するというイメージが強かったと思いますが、何がアートか、何が美しいかということを決めるのは見る人なんです。私たちが持っているガラクタと言われているようなものの中には西洋や日本的な美とは比較できない根源的な美というものがあるんです。仮面にしても彫像にしても、どんな民族でも作り得る美というものがあって、そこには博物館と美術館の壁はない。国立新美術館での展示は、自分が美しいと感じるものは何なのかということを個人個人が意識できる良い機会になると思っています。


「みんぱく」の展示風景。

展示では何を大切にしていますか?

この続きは有料会員登録をすると
読むことができます。
cakes・note会員の方はここからログイン

1週間無料のお試し購読する

cakesは定額読み放題のコンテンツ配信サイトです。簡単なお手続きで、サイト内のすべての記事を読むことができます。cakesには他にも以下のような記事があります。

人気の連載

おすすめ記事

ケイクス

この連載について

初回を読む
いま、僕たちが話を聞きたい人

カンバセーションズ

インタビュアーという存在にスポットを当てるこれまでにないインタビューサイト「QONVERSATIONS(カンバセーションズ)」。毎回異なるクリエイターや文化人がインタビュアーとなり、彼らが「いま、本当に話を聞きたい人」にインタビューを...もっと読む

この連載の人気記事

関連記事

関連キーワード