多少チヤホヤされても、ぜんっぜん信用してないです
—— のっけから失礼ですが、以前は『アメト——ク』なんかで博多華丸・大吉の児玉清のものまねをする方じゃない方なんて呼ばれて……。
博多大吉(以下、大吉) そうですそうです、「じゃない方芸人」。
—— それが今や「大吉先生」と呼ばれるようになって。この数年でどのような変化があったと思われますか?
大吉 世の中は2011年でゴロっと変わったなと思いますけど、僕自身はねえ。変わってないと思うんです。あんまり自覚がないですよね、うん。
—— 大吉さんの自覚とは別に、大吉さんの周囲の状況は確実に変わったはずなんですが、ご自身としては?
大吉 信用してないです。多少チヤホヤされても、ぜんっぜん信用してないですよ。またまた、と思ってます。
—— 常に、またまた!と思っていらっしゃいますよね。
大吉 はい。騙されないです。そう簡単に、騙されないです。
—— 常になにかを疑ってかかっている。今回文庫化される『年齢学序説』にも自分のことを「ものすごくネガティブなポジティブ」と書いていますが、それは4年たっても変わらない。
大吉 政党で言うと自民党ですよね。保守ですから。……まあ、今のもちょっと意味の分からない例えでしたけど、ほんと実感がないですよね。その……、売れているらしいんですよ、僕、今。
—— 売れてますよ。
大吉 生活は変わってないんですよ。スケジュールも実はそんなに変わってないし。4年前も忙しかったですもんね。だから「急にどうした」って思ってるんですよ。4年前も大吉先生って呼ばれてるはずなんですけどねえ? すでに。
—— 一般の人にもそれが浸透してきた4年間、ということなんでしょうか。
大吉 たぶんそうなのかもしれません。
—— 文庫化の話を聞いたとき、正直どう思われましたか?
大吉 本を出したのもすごいことだと思いましたけど、文庫は……もっとすごいですよね? よっぽど好きな方じゃないと、この単行本は買わないと思うんですけど、文庫だったら、ふっと手に取ってもらえるのかなあと。安いですし。だからこうやって見ると、すげえなあと思いますね。
『年齢学序説』博多大吉
人生における転機はいつ訪れるのか。芸人の成功のきっかけになった出来事を調べはじめた博多大吉が、古今東西の偉人・芸人・歌手・アスリートなど、膨大なデータから導き出した「年齢の法則」をまとめた一冊。「マジか!?」と突っ込みつつ、読むとなぜか元気が出てくると評判を呼んだ。
人生の転機はある一定の年齢でやってくる?
—— 単行本から4年の時を経て、『年齢学序説』を初めて文庫で手に取る方も多いと思いますが、この本について、大吉さんからご紹介いただけますか。
大吉 もう何回も言いますけど、ビジネス本っていうんですか、『男が30歳までにやらなきゃいけない50のこと』とか、『20代のあなたへ』『40代のあなたへ』とか、そういう路線だと思って読み進める方がいるんですよね、たまに。違うんです、そんなんじゃないんですよ。「サンプルが少なすぎるのではないか」「一概にそうは言えないのではないか」とか、読者カードが来るんですが、違うんですよ。まずそこに騙されないように(笑)。
—— じゃあ何が?
大吉 1970年生まれの人(博多大吉氏本人)が好きだったものが書いてあるだけです。お笑いとプロレスと歌手とマンガと……。
—— とは言え「年齢学」というからには、何らかの分析に基づく説が展開されているのだと思いますが、ポイントを教えていただけますか。
大吉 まあ、26歳でいろいろありますねえ、とかね。26歳、38歳、51歳……、成功する人はある年齢で転機が来たり、成功への足がかりをつかんだりしますよ、というのが柱なんですが、結局はいくつでもいいんだという本です。
—— 自分を振り返ったときに、26歳のときに初めて芸人としての自覚が芽生えたということが書かれていますが。
大吉 僕ら(博多華丸・大吉)って、特殊って言われるんです。前に出ないとか、欲がないとか。よしもとらしくないと言われることも少なくないんですが、その秘密はすべて、26歳に詰まっていますね。僕が26歳のときに福岡吉本で……まあいろいろあって、こうなっているんです。読んでいただければ分かるんですけど、1年間何もやっていない時期があって、会社の人と揉めて。そこからいろんな心境の変化とか、環境の変化があって、今の僕らにつながってくる。
—— とても特殊な芸歴というか、芸人の成功パターンとしては王道から外れた形でここまで来た博多華丸・大吉の秘密がここにはあると。
大吉 隠されていると思いますよ! はい、書いたつもりではいますよ。
細木式には厄年なんてない!
—— 文庫化に際して、各章に新たな考察をプラスされたとか。
大吉 そうですね。クレームが多かった部分を処理はしてますね(笑)。企業として、当然の対応はとらせていただきました。一番言われたのが、26歳のころのたけしさんとタモリさんはどうなんだというクレーム。書いてないじゃないかと。もちろん書きましたよ、そこは。26歳のお二人の話を。
—— 『年齢学序説』を書かれるまでには構想8年、執筆にも3年以上かかっていますが、今回の加筆はどれくらいの時間をかけたんですか?
大吉 2日くらいです。本当に、パパッとできました(笑)。
—— そのギャップが……。ところで執筆はポメラとお聞きしていますが。
大吉 移動中と外出先ではポメラで。最近iPhoneも覚えまして、iPhoneとポメラと家のパソコンを併用しながら。ポメラはねえ、夜が弱いんですよ。バックライトがね……弱点ですね。でもポメラ、めっちゃよくないですか、軽いし。iPadとかも素敵ですけど、ポメラのあの「打ってる感」が安心を呼ぶというか、働いているぞ!と実感するというか。ノートPCは重いんですよ。飛行機によく乗るから重いと辛い。何回も持ち歩いてみたんですけど、結局持っているだけでやった気になってしまうので、あんまり僕には向いていなかったですね。
KING JIM デジタルメモ「ポメラ」 DM100クロ ブラック
—— 4年の月日を2日で埋めた新考察のスピード感というか勢いが気になります(笑)。文庫化までの4年の間に大吉さんご自身の年齢は、書かれたときの37歳から、四十路に入りました。
大吉 そうですね。42歳ですから。
—— この本、40代の分析が……。
大吉 ないですよ(きっぱり)。40代は自由にやってほしいんです。もう年齢がどうのとか、40代は考えなくていいんじゃないかと思いますね。ラストスパートじゃないですけど。
—— もうラストスパートですか!?
大吉 ラストスパートというか、行けるところまで行っていただいて。突っ走ってください。51歳くらいで疲れが出てくると思うので、そのときにまた51歳の年齢学が発動すると。
—— 厄年的にいえば、42歳はまさに男性の……
大吉 厄年なんてないって言ってました、細木数子先生が。僕、この意見だけは信用してます。『年齢学序説』にも、厄年はないんです。細木式です! お体に気をつけてくださいとしか言いようがないです。それ一番重要ですね。ガタが来ますんで(笑)。
(次回、1月22日公開予定)