「サムライ」「ニンジャ」「ハラキリ」が最も知られる日本語といわれたのは今や昔。というより、ほんとうにそんな時代があったのでしょうか。現在、広く知られるようになった言葉の代表格といえば、「カワイイ」ですね。アニメやキャラクターを中心にして、日本のカワイイものが世界中で人気を博しています。
そうした流れは、もちろんアートの世界にも影響を与えます。アートと聞くとつい浮世離れした、高尚で普遍的なものを思い浮かべてしまうかもしれませんが、アートだけがそんな何かを超越した存在であるわけありません。アートだって当然、時代とともにあって、社会の動きや流行と無縁ではいられません。
「カワイイ」をキーワードにつくられた展覧会が現在、東京・山種美術館で開かれています。その名も「Kawaii日本美術」展です。数ある日本美術から、「カワイイ」をテーマに名品を選りすぐるという趣向。このようなわかりやすいお題が設定されていると、とたんに展示に親しみが湧いてきますね。たとえ日本美術をあまり観たことがなくて、予備知識だってとくになかったとしても、ひとたび「カワイイ」というくくりがあると知れば、
「あれも、これも、たしかにカワイイ」
「いやこっちのほうがもっと……」
と、すぐにのめり込んでいけます。展示を観る際の「視点」ができるとでも申しましょうか。展示企画が視点を提示してくれるときは、その導きに積極的に乗ってみるとよろしいですよ。
cakesは定額読み放題のコンテンツ配信サイトです。簡単なお手続きで、サイト内のすべての記事を読むことができます。cakesには他にも以下のような記事があります。