カダフィ(リビア革命政権最高指導者)【第1回】人心を失った黄昏の独裁者

悪の親玉としてイメージされがちな「独裁者」たち。この連載では、世界を代表する独裁者たちが、若い頃にどのような知識や価値観、思想などの「教養」を得て、それをどう国家支配に反映させたのかを読み解いてゆきます。今回からはカダフィ大佐。1969年以来の長期政権の果てに殺害されたカダフィは、いったいどのような「教養」を抱いて独裁に至ったのでしょうか。(『独裁者の教養』より)

「あなたは、自分のアイデンティティをどこに置いていますか?」

2011年6月30日、神奈川県藤沢市湘南台。筆者のやや不躾な質問に、相手は目を丸くしてからニヤッと笑った。

「日本人の取材者で、そんな質問をする人に初めて会いました」

そんな彼の太い眉毛に視線を合わせて、続けて聞く。

「つまり、イスラーム教徒(=ムスリム)とリビア人と、アラブ人と日本人。あなたは、自分がそのうちのどれだと思うか—? という意味です」

「ううん、難しいですね……。基本的にオレは自分自身を〝イスラーム教徒のリビア人〟だと思っているんですけど、ケースバイケースなんです。思考の対象によっては、日本の価値基準をベースにして考えることもある。あと、ムスリムでもリビア人でも日本人でもない〝オレ個人〟の考え方をすることだって、もちろんあるんですよ」

オリエント博物館の彫刻のような相貌から、日本の学生言葉が当たり前のように飛び出す。彼の名はスレイマン・アーデル。リビア人の父と日本人の母を持ち、1987年に東京で生まれた。リビア国籍を持つ彼は6歳から19歳まで本国で暮らし、現地で兵役も経験した。その後、2006年に再来日。社会人を経て、現在は慶應大学に留学中である。

「じゃあ、こないだのデモの主催は、なに人としての行動だったんですか?」

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独裁者の教養

安田峰俊

悪の親玉としてイメージされがちな「独裁者」たち。しかし、彼らは優れていたからこそ「独裁」を行えたはずです。そこで、この連載では、世界を代表する独裁者たちが、若い頃にどのような知識や価値観、思想などの「教養」を得て、それをどう国家支配に...もっと読む

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