パート5. 大人はわかっちゃくれない 渡部亜希穂[15:04−]

なんで赤の他人から、そこんとこ強調されなきゃいけないのよ。しかも今日二回目。あーくそ、あのロン毛男。思い出したらまた腹たってきた。死ね――高校2年生、徳永準の自殺予告メールがネットに流出しました。頭脳派、お人好し、リーダー気取り、犯罪者まで入り乱れて彼と彼を導く殺人鬼(?)〈17〉に迫ります! 15人24時間の大晦日から始まる群像サスペンス長編! 読みはじめたら止まれない、ライトノベル史上〈もっとも長い一日〉をご堪能ください。(イラスト:箸井地図)

渡部亜希穂[15:04−15:10]

 どこ、ここ?
 あたし、あたりを見回す。ガクガクゆれてる。バスだ。車両のいちばん後ろ。
 そうだ思い出した。わーって店から逃げ出して、先輩たちが追っかけてきて、ニンシンしてる美人と未由佳みゆかさんがぶつかって、エジプトおねーさんが「お逃げなさいっ!」ってバス停のほうに押してくれて、もうあたしブワーッてなって、そしたらバスがパパーッて来たんで飛び乗った。
 ……のはいいんだけど、このバスどこ行き?
「あの、どちらまで?」
 となりのニンシン美人がきいてくる。んなこと言われても。
「えーと」どこ行きだってのよ!「どちらまでがいいですか?」
「は?」
『──次はー、文化会館前ー、武蔵野市民文化会館にお越しのお客さまはー……』
 あんまり早くおりたら、先輩たちに追いつかれる。ような気がして、さっきからあたしすごく頭低い姿勢ですわってる。こうすれば窓の外から見つからないし。だらしないポーズだ。ふだんここまでひどくないのに、あたしったら。
 でも、どこでおりたらいいの?
 低いとこから見上げる窓の外は、どんより雲と、電信柱と、それからパステルカラーのマンション。あたしの人生とまるで関係ない、あたしんちよりもお金もってそうな人たちの家、家、家。
 どうしよう? どうしよう!
「あのお……」
「はいぃっ!?」うわ。大声になっちゃった。
「わたくし、キサイチともうします」
「はあ」ちょっとだけ座り直して、おじぎを返す。でも外からは見えないように、低いまんまで。「渡部です。ども」
「なんだかおかしなことに……なってしまいましたね」
「え、あーそうっすね」
「あのお」
「は?」
「どなたも、追いかけてはいらっしゃらないようですよ」後ろの窓をふりむいて、彼女がぼそり。
「……はあ」
 気まずーい笑顔。
 あそうだ! トオルさんにレンラクしとかなくちゃ。あたし、超ハイスピードでメールうちこみ開始。あたし無事です、がんばって逃げ出しました、てゆーか先輩の『ジューヨーな話』ってねずみ講だったんですよ信じられます!? でもトオルさんのおかげで逃げれて、となりには美人がいます! みたいな。
「お友だち、ですか?」
「は? ええ、まあ」
 けっ。どーせ「ただのお友だち」ですよんだ。なんで赤の他人から、そこんとこ強調されなきゃいけないのよ。しかも今日二回目。あーくそ、あのロン毛男。思い出したらまた腹たってきた。死ね。
 そーよ「お友だち」だわよ。まだ今んところはね。でもこっから先はわかんないわよ。なにしろあたし、もう昨日までの亜希穂ちゃん(ダメダメ十七歳)じゃないんだかんね。トオルさんからもらった勇気のおかげで、生まれ変わった亜希穂ちゃん(まだまだ十七歳)なんだ。負けないぞ。
「いいですね、お友だちって──」キサイチさんだっけキサイシさんだっけ、とにかくその美人がまた話しかけてくる。
「はあ」
「私、いましがたケータイをなくしてしまって……いえ、正確にはとられてしまったのですけど……そうしたらもう、大切なお友だちとレンラクがとれなくなってしまって──ほんとにどうしたいいのか──」
 はーそうですかそりゃタイヘンですな。
 そんなに大切な友だちなら、ちゃんと番号おぼえとけっつーの。
 あ。
 そーいえば、あたしもトオルさんの番号おぼえてないや。ってそれどころか、あたしトオルさんのメアド知らないじゃん! あんだけ一緒にいたのに!

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15×24(イチゴーニイヨン)link two 大人はわかっちゃくれない

新城カズマ

高校2年生、徳永準の自殺予告メールがネットに流出しました。彼を救うべく懸命に彼を探す捜索隊、否応なしに巻き込まれる者、別の思惑を抱くもの、そして殺人鬼まで……!? 15人24時間の大晦日の長編群像サスペンス、こっからが本番です! 読み...もっと読む

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