パート5. 大人はわかっちゃくれない 笹浦耕[14:46−]

電話のむこうの人間は、うちの母親なのかもしんない。でなきゃどっかの星の宇宙人かもしんない。もしかしたら、この世で最悪の、根性のねじ曲がった、快楽殺人嗜好症の╳╳╳╳野郎かもしんない――高校2年生、徳永準の自殺予告メールがネットに流出しました。頭脳派、お人好し、リーダー気取り、犯罪者まで入り乱れて彼と彼を導く殺人鬼(?)〈17〉に迫ります! 15人24時間の大晦日から始まる群像サスペンス長編、link oneに引き続きこっからが本番! 読みはじめたら止まれない、ライトノベル史上〈もっとも長い一日〉をご堪能ください。(イラスト:箸井地図)

笹浦耕[14:46−14:47]

 オレがそん時の馬鹿でーす。

 だからつまり、その最悪のタイミングで〈トウコ〉さんのケータイに電話した大馬鹿野郎ってことね。
 だってしょーがねーじゃんよ。あっちがそんなことになってるなんて、わかんないっつーの。

「もしもし〈トウコ〉さ……」
『はいもしもし』
 低い男の声だった。
「あ、すんません、まちがえました」すぐ切って、もっぺんかけ直し。「もしもーし、〈トウコ〉さーん」
『いや、〈トウコ〉さんはあいにく忙しくってね、今は電話に出られないんだ』
「…………」
 オレ、一瞬考えた。すくなくとも、伊隅の声じゃないことだけはすぐわかった。
「……えーと、もしかしてミツハシさん?」
『違うよ』
「じゃあ在所? マーチ? なに、どしたの?」
『それも違う』
「…………」
『もうちょっと想像力を働かせようよ、君。人生というのはね、思いもよらない突発事がおきるものなんだよ』
「はあ? あんた、誰さん?」
『君ねえ。人に名前を訊く時はまず自分から名乗らないと。社会常識だよ、それは。お父さんやお母さんに教わらなかった?』
 オレ、むかついたけど我慢。
「──オレ笹浦ってんだけど。あんた誰?」
『さーて誰でしょう。それにしてもなかなか珍しい苗字だねえ、ササウラって。笹の葉サラサラに壇ノ浦の浦でいいのかな?』
「………………」
 オレ、そん時に思ったわけですよ。電話ってのはすげー機械だって。誰が相手なのか、わかんねーのに会話できる機械なんだって。
 電話のむこうの人間は、もしかしたら、〈トウコ〉って名乗ってたけど実は男だったのかもしんない。
 それはもしかしたら、うちの母親なのかもしんない。
 でなきゃアメリカ大統領かもしんない。
 どっかの星の宇宙人かもしんない。
 精巧なロボットかもしんない。
 この世で最悪の、根性のねじ曲がった、快楽殺人嗜好症の╳╳╳╳野郎かもしんない。
 誰と話してんのか、ほんとのところはわかんねーんだ。
 うん。だからたぶん、すげーのは機械じゃなくって、それをノンキに使ってるオレたちのほうなのかもしんねーけど。
「なんなんだてめー」
『おじさんのことは、ファブリって呼んでもらえるかな』
「…………………………………………………………なんなんだてめー」
『同じ台詞を繰り返すのは思考が硬直してる証拠だよ、笹浦ギルバート君』
「ギルバートじゃねーよ。なんでギルバートなんだよ」
『あれ、違ったっけか。何ていうんだっけ?』
「あのな! オレは笹浦コ……」
 いや。
 待て待て待て。
 やばい。なんかやばいぞ、これ。
「……知るかボケ!」
 つって電話オフにしてから、オレは重大なことに気がついた。

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15×24(イチゴーニイヨン)link two 大人はわかっちゃくれない

新城カズマ

高校2年生、徳永準の自殺予告メールがネットに流出しました。彼を救うべく懸命に彼を探す捜索隊、否応なしに巻き込まれる者、別の思惑を抱くもの、そして殺人鬼まで……!? 15人24時間の大晦日の長編群像サスペンス、こっからが本番です! 読み...もっと読む

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