それでもぼくは炎上する
「ぼくが発言して、炎上(*1)すればするほど、皆さんは発言しやすくなると思うんですよね。それはなんでかっていうと、要はみんな怖がりすぎだと思うんですよ。ぼくが叩かれているのを見ることによって、きっとみなさん、勇気を得られるのではないかと。実際、ぼく自身の経験を振り返っても、そういうことって頻繁にあったんですよ。つまり、誰かが炎上している姿を見て、あぁ、この人はこんなに石を投げつけられているけど、しっかり自分の意見を言っているな。自分はなんて小さいことで悩んでいるんだ、と。」
2013年4月12日、400人以上の聴衆がその場にいて、インターネット上でも数万人が閲覧している大規模なイベント会場——「切込隊長」ことやまもといちろうさんとぼくの間で、ブログ(*2)上での論戦を経て実現した対談イベント(テーマは「果てなきブログ論争に意味はあるか」)の会場——の中、ぼくがこう言った瞬間、会場は一瞬静寂に包まれました。
やまもといちろうさんは、国内では屈指の影響力を持つブロガー(*2)で、国内有数の「炎上ウォッチャー」としても名高く、「やまもといちろうあるところに、炎上あり」と言っても過言ではない方です(ちなみに、以前は、いまだに悪名高い(?)インターネット上の巨大掲示板「2ちゃんねる」の運営に携わられていたこともある方でもあります)。
そんな、対論者のやまもとさんからは、「意外だった……」という感じで、ぼくに、次のような質問が投げかけられた。
「ちょっと誤解してたのかもしれないですけど、皆で石を投げにいこうって話じゃなくて、石を投げられているけど別に大丈夫なんだよ、っていうのを示そうとしているの?」
ぼくの答えはこうだった。
「そうですね。ネットでアホだのバカだの死ねだの、暴言を投げられても、別に死にはしませんよ、ということですね。だから皆さん石を投げられる立場になってもいいんじゃないですか? っていうのを伝えたいですね。」
かっこつけているように聞こえるかもしれませんが、これは、ぼくが「プロのブロガー」(*2)としての行動指針にしている、ウソ偽りない態度です。
そうです、ぼくは「みんなもっと炎上しようぜ!」と呼びかけたいのです。
この本のゴールは、あなたをメラメラと「炎上」させることにこそあるのです。
人に嫌われてもいい、友だちなんていらない
2013年4月に放送された、NHKの「ニッポンのジレンマ」という番組で、
会議などの話し合いの場で『空気を読む』ことについて、あなたはどう思いますか?
という視聴者アンケートが取られました。一番多かった回答は、
空気は読むべきだし、自分は空気を読む——53.75パーセント
次に多かった回答は
空気を読む必要はないが、自分は空気を読む——20.75パーセント
という結果でした。
みなさん、空気を読んでいらっしゃるんですね……。
ぼくは空気を読みません。
「自分が書きたいこと、書くべきだと思うことは、人から嫌われようと書く」というのが信念です。
そんなスタンスなので、これまで数々の「炎上」を経験してきました。ぼくは、日本でもっとも多くの「炎上」を経験しているブロガーかもしれません。
そんな燃える日々を生きていて、ぼくはあることに気がつきました。
それは、空気を読めば読むほど、学校や職場、私生活や人間関係において、かえってストレスを抱えて生きていくことになる、ということです。
その事実を踏まえて、この本を書くことにしました。
本書は、数多くの誹謗中傷や「炎上」を経験し、おびえ、傷つき、それでも怯まず発言しつづけたぼくの試行錯誤にもとづく作品です。
本書では、まず、容姿や能力に自信が持てず、人一倍シャイで臆病だったぼくが、「炎上」や「他人との軋轢」を、覚悟を持って恐れなくなった過程をお話しします。
そして、多くの「炎上」を乗り越えてきた経験から、「他人の目を気にすることなく、自信を持ってふるまう」「集団の中で、言いたいことを言う」方法——強い心の身につけ方——を説明しています。
空気なんて読まなくていい。人に嫌われてもいい。友だちなんていらない。そんな「覚悟」が人生を変えてくれました。「炎上」が、僕を育ててくれたんです。
「自分の心を変える」だけで成功するなら苦労しない
現在、ぼくは、日本のブロガーの中でトップクラスの位置にいます。
ブロガーとして独立して約1年半で、月に30~50万円の売上を上げられるようになり、2013年にはブログのみから年間500万円を売り上げました。2014年1月には月間のPV数が130万に到達。「炎上」する一方で、うれしいことに、多くの方から感謝の言葉もいただいています。
当初「炎上」を恐れ、自由に発言することなく、窮屈な生き方をしていたぼくですが、人に嫌われてもいいという「覚悟」を持ったことで、本業であるブログの売り上げも上がっていきました。ブログをきっかけにコンサルティングや講演などの、新しい仕事にもつながっていきました。そして何より、ぼくは以前よりもずっと「自由」な人生を謳歌できるようになりました。
そうした境地にたどり着いてはじめて、多くの人が、「和」を守るために自分を殺し、語ることをやめ、それでいて「自分は自由でない」と不満を感じている現状には、明確な理由があることに気づきました。
それは、空気を読まずに自分の意見を語る「覚悟」を身につけるためには、「自分の心」だけを一方的に変えるだけではダメだ、ということに、99パーセントの人が気づいていない、ということです。
「強い心の身につけ方」や「人に嫌われる覚悟」「決断力の磨き方」を説く多くの本は、読者に「自分の心を変えること」をすすめ、さらに「自分の心」を変えるためにはどうすべきかを説いています。しかし、覚悟を持つだけで事足りるならば、多くの人がすでに「自分を変えること」に成功しているはずです。
だからこそ「言いたいことが言える地位を築き、環境をまず変えること」ことこそが、「真の意味で自分を変える」ための第一歩になる、ということを本書では提示します。その上で、並行して、「強い心」を作っていく。
これこそがぼくが経験してきた、言いたいことを言えるようになり、自由に生きることができるようになるための道です。
誰でも、今からでも、変わることができる
ぼくはこれまで、ブロガー、マーケティングコンサルタントとして、多くの企業や個人の悩みに触れてきました。その経験から、多くの人が「自由に発言したい」「自由に生きていきたい」と思っていながらも、それができずにもがいていることがわかりました。
ぼくも「いま」は勇気を持っていますが、「昔から」勇気を持っていたわけではありません。「勇気」という資本を持つためには、健全な自尊心を育む「環境」を作る必要があります。容姿や能力に自信が持てず、人一倍シャイで、臆病だったぼくでも、「今」は勇気を持つことができているのです。
だから、あなたが「今」その勇気を持てないのは、あなたのせいではない。
その「覚悟を持つため」のひとつの方法として、本書では「炎上」することも提唱しています。
ぜひ、これからは空気を読むことなく、自由に発言できるような人間になってほしいと勝手に願っています。他人との軋轢は経験することになりますが、自分の心を裏切りながら生きるより、それは何倍も気持ちがよくて、自由な人生となるでしょう。
「人の目を気にする自分」「集団の中で言いたいことも言えない自分」「変わりたいのに変われない自分」「つまらない常識やしがらみに縛られている自分」なんて、炎上することで燃やし尽くしてしまえ——。
これこそが、本書の提案です。
大丈夫。「ぼく」にもできたのだから、「あなた」にできないはずがない。本来ぼくらは、何者にも縛られてなんていないのです。自らを縛ってきた鎖なんて、身にまとった炎で燃きつくしてしまいましょう。
ぼくらはすでに「自由」なんだ。
(*1)炎上……誰かが、何らかの不祥事や失言、もしくは何か目立つ発言を行った場合などに、非難や中傷の声が、インターネット上で大きく燃え広がえるさまを指すネット用語。
(*2)ブログ、ブロガー、プロのブロガー……ブログとは、個人や数人のグループで運営され、日々更新される日記的なWebサイトの総称(ウェブ上のログ〈日誌〉の略称)のことで、ブロガーとは、そのブログを書く人のこと。プロのブロガーとは、日本でも最近出だした、ブログ上に掲載したアフィリエイト(成功報酬型広告)からの収入を得るなどして、生計を立てている人のこと。代表的なアフィリエイトには、アマゾンなどの電子書店の広告をブログに掲載して、そこから手数料収入を得るなどの方法がある。
(*3)PV数……ページビュー数の略。ユーザーがインターネット上のページを閲覧した回数のこと。
2月18日発売決定! 人一倍臆病だった青年は、いかにして「炎上」を恐れないトップブロガー・イケダハヤトへと進化したのか? 何者でもない人間が「ずば抜けた成果」を出すために必要なことは、すべてこの一冊に記されている。
なぜ僕は「炎上」を恐れないのか 年500万円売り上げるプロ・ブロガーの仕事術