パート5. 大人はわかっちゃくれない 渡部亜希穂[13:30]西満里衣[13:08−]

あたし、裏切り者だ。ひどいやつだ。きっと人殺しよりも悪いやつだ――高校2年生、徳永準の自殺予告メールがネットに流出しました。頭脳派、お人好し、リーダー気取り、犯罪者まで入り乱れて彼と彼を導く殺人鬼(?)〈17〉に迫ります! 15人24時間の大晦日から始まる群像サスペンス長編、link oneに引き続きこっからが本番! 読みはじめたら止まれない、ライトノベル史上〈もっとも長い一日〉をご堪能ください。(イラスト:箸井地図)

渡部亜希穂[13:30]

 あたしはほんとに最低の女だ。
 まじで最低だ。いつものかる~い口調の「サイテー」とかじゃなくて、ほんとにほんとの最低だ。画数がたくさんの、最低・最低・最低だ。
 あたしは、トオルさんに罪をかぶせようとした。
 トオルさんをおいて、逃げようとした。
 あたしを助けてくれた人……って御苑の前のあれはうまくいかなくって一撃でやられちゃったけど、とにかく今朝からずっとあたしのことを助けてくれてた人には変わりない。そんなステキな人を、あたしは見捨てようとした。
 ついさっき、いい子になりますって決めたばっかりだったのに!
 最・最低だ! サイアクだ!
 こういうのなんてんだっけ。裏切り者のユダ。そう、それ。
 あたし、裏切り者だ。
 ひどいやつだ。
 ほんとまじでひどいやつなんだ。きっと人殺しよりも悪いやつだ。こんなやつ、死んじゃったらいいんだ。そうだ。あの徳永ってやつじゃなくって、あたしのほうがジューナナと心中しちゃえばいいんだ。そうだよ! そうすりゃイッセキニチョー、問題カイケツじゃん! 死んじゃえ、死んじゃえ、はやく死んじゃえ渡部アホ子十七歳(死亡年齢同じ)!
 でも、そしたら。
「──だいじょうぶだよ、亜希穂さん」
 まるで、ぴかーっと光がさしこむみたいに。
 トオルさんの言葉。
 最初の電話の時とおんなじ言葉。
 あたしの心、ふわーっとなる。すごい。トオルさんて、ほんとすごい。魔法使いだ、この人。さっきは手のひらでケータイ消して、こんどは一言であたしの心の痛みを消してる。すごいすごいすごい。魔法使い。あたしの大好きな魔法使い。
 決めた、こんどこそ決めた。てゆーか、心にちかった(画数おおくって、漢字わかんないけど)。あたし、トオルさんにふさわしい女の子になります。ぜったいなります。そんでもってトオルさんのこと好きです。大好きです。もう、この場でぜんぶ告っちゃうもんね。
「あ、あの! トオ──」
「アキホさん」
「え?」
「ケータイ、鳴ってるよ」
 ……なんでこのタイミングかな、もう!!
 画面を見る。メールだ。あれ、先輩からだ。めずらしいな、直なんて。

件名:もう一時半だよ?

「あ」
 やべ。

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15×24(イチゴーニイヨン)link two 大人はわかっちゃくれない

新城カズマ

高校2年生、徳永準の自殺予告メールがネットに流出しました。彼を救うべく懸命に彼を探す捜索隊、否応なしに巻き込まれる者、別の思惑を抱くもの、そして殺人鬼まで……!? 15人24時間の大晦日の長編群像サスペンス、こっからが本番です! 読み...もっと読む

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