徳永準[13:17]
ぼくの中で、なにか別の生き物が動いてるみたいだ。
あれはいったい何だったんだろう。まるで車酔いとインフルエンザがいっぺんに襲ってきたみたいな。伊隅の顔を見て……でもあいつのせいじゃない。そして、ぼくはやっと自覚する。
連想だったんだ。伊隅。クラスメート。学校。日常。ぼくが、もう帰らないって決めた場所、捨てた時間。
恐怖。
そうだ。あれは恐怖だ。
まだ生きていかなくちゃならない、その恐怖。変えようのないことが終わらない、終わってくれないという恐怖。
〈明日〉という恐怖。
私市陶子[12:46−13:25]
さて、そうは言いましても、責任は責任です。
たとえ望まずに与えられた分担であっても、きちんとこなさなければ周りの人たちに迷惑をかけてしまいます。ですから、私は離れで電話番を務めることにしました。もっとも、かかってきましたのはササウラさんだけだったのですが。
しばらくしますと、
「はい、わかりました。それではこちらに」
お手伝いさんは、
インターホンで案内をしまして、玄関にむかいます。しばらくして男の方がひとり、木陰から姿をあらわしました。
とても体の大きな方でした。
cakesは定額読み放題のコンテンツ配信サイトです。簡単なお手続きで、サイト内のすべての記事を読むことができます。cakesには他にも以下のような記事があります。