パート5. 大人はわかっちゃ… 私市陶子[12:45−]笹浦耕[12:58−]伊隅賢治[13:15]

オレはここから出たかった。徳永のド阿呆を捜して、もうじゅうぶん手を尽くしたよってなって、そっから先は、当初の予定どおりの楽しいデートしたかった――高校2年生、徳永準の自殺予告メールがネットに流出しました。頭脳派、お人好し、リーダー気取り、犯罪者まで入り乱れて彼と彼を導く殺人鬼(?)〈17〉に迫ります! 15人24時間の大晦日から始まる群像サスペンス長編、link oneに引き続きこっからが本番! 読みはじめたら止まれない、ライトノベル史上〈もっとも長い一日〉をご堪能ください。(イラスト:箸井地図)

私市陶子[12:45−13:08]

 私、いささか腹が立っていたのです。
 マーチさんが意見を変えて私を離れに入れた理由は、わかってみれば簡単なことでした。離れの居間にたどり着きましたところ、そこにはどなたもおられません。ただ、一枚のメモが残されているだけでした。

シエラ・マイクより
キロ・タンゴへ
   本部での連絡中継役と
   ハードディスクの解読
   よろしくお願いします

 マーチさんは、ノブさんを追いかけて、正門から出ていってしまったのです。そのことに気づくまでに、私は数分を費やしました。
 実のところ、どこかに『丹後たんごさん』という方が別にいらっしゃるのでは、と思って一階のあちこちを探してまわったのですが、それはどうでもよいことですので省かせていただきます。どのような理由からか、ともかく私の名前はキロ・タンゴにされてしまいました。
 先生。私ときたら目眩がして、もうどうして良いやら分からないくらいです。

⇒私市陶子[12:46−]へ進む


笹浦耕[12:58−13:08]

 しのぶさんがキッチンのほうに出てきたのは一時ちょっと前。ジャズの曲っぽいのをハミングしながら、こっちに背中むけて昼飯の準備してる。
 って、いやほんとに、まじでリビング&ダイニングルームにずーっと背中むけっぱなしなのよ。
「あのさ、しのぶさん」
「だめだよ。言ったでしょ、わたし決めたの。徳永くんの一件がかたづくまで、コーくんとは顔あわせないって」
 だそーです、はい。
 だから冷蔵庫と流しと食器棚のあいだを行き来するのも、ずっとカニ歩きと手探り。
「あぶないよ、しのぶさん」
「わかってるわよ」
「そこ、俎板まないたのはしっこに包丁、出しっぱなしだよ」
「……わかってるわよ」  刃すれすれで、しのぶさんの指がひっこむ。
 頑固っつーか無駄に義理堅いっつーか。
「手伝おうか?」
「いらないわよ」
「ふーん。じゃあ手伝ってよ、こっち」
「は?」
「こっち。徳永の捜索。他に頼れる人がいなくってさ。しのぶさんじゃなけりゃダメなんだ」
「…………」長めの沈黙。イヤな予感がするぞ。「……なんでわたしじゃないとダメなの?」
「そりゃもちろん」
 さーて困った。いきなりこうくるとは思ってなかったぞ。オレ、手もとのメモを見直す。そうか、『他に頼れる人がいない』だけでよかったんだ。
 くそ、急いでなんか理由を思いつかねーと。やばい、これはやばい!
「しのぶさん、バイクもってるでしょ。それだと移動が速いし、いざって時に徳永つかまえんの楽じゃん」
「今日は混んでるから、たいして違わないわよ。大晦日でしょ」
「そうなの?」
「そうよ。初詣暴走もあるし、かえって危ないわよ」
「そーかなあ」
「そうよ。それにね」トマトの大軍が、ドカドカと俎板に積み上げられる。「今日は妹の看病しなくちゃいけないから、出歩けないの。どうしても」
 ……いや、その妹さんが『しのぶさん誘導作戦』の参謀なんですけど。
 オレ、黙ってしまった。
 しのぶさんの口にした一言が、ちょっと気になったからだ。看病しなくちゃ。

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15×24(イチゴーニイヨン)link two 大人はわかっちゃくれない

新城カズマ

高校2年生、徳永準の自殺予告メールがネットに流出しました。彼を救うべく懸命に彼を探す捜索隊、否応なしに巻き込まれる者、別の思惑を抱くもの、そして殺人鬼まで……!? 15人24時間の大晦日の長編群像サスペンス、こっからが本番です! 読み...もっと読む

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