パート5. 大人はわかっちゃくれない 笹浦耕[12:51−]伊隅賢治[12:50−]

くれぐれも〈捜索隊〉の連中に気を許すな。誰が殺人鬼〈17〉なのか、まだわからないんだ――高校2年生、徳永準の自殺予告メールがネットに流出しました。頭脳派、お人好し、リーダー気取り、犯罪者まで入り乱れて彼と彼を導く殺人鬼(?)〈17〉に迫ります! 15人24時間の大晦日から始まる群像サスペンス長編、link oneに引き続きこっからが本番! 読みはじめたら止まれない、ライトノベル史上〈もっとも長い一日〉をご堪能ください。(イラスト:箸井地図)

笹浦耕[12:51−12:54]

 あ、またオレね。
 とまあそーゆーわけで「中野駅で早めの一件落着」は夢と消えたわけですよ。そのことは在所ざいしょからの電話で知ったんだけど。
 ちなみに在所のやつは、けっきょく〈マーチ〉といっしょに西荻窪のホームを見張りつつ、西のやつ(つまり〈マリエ〉ね)を待つことにしたらしい。
「〈マリエ〉って、えーと、中野にいたやつか」
『そうそうそう』と在所の妙に明るい声。『次の電車でこっちにむかうって、けど』
「って、おまえら二人とも西荻で見張ってんだろ? どうせなら──」
『さっき〈トウコ〉さんから写メ見してもらって、すげえビックリしちゃってさ! このマリエって子、なんと!』
「?」
『すげえ可愛いんだよ!』
「へー」いや、オレが言いたかったのは、つまり徳永のド阿呆が高円寺から荻窪の間のどっかで降りたらどーすんの、せっかく二人いるんだからどっちか動けよ、ってことなんですけど。これだから金持ちの坊ちゃんは。「そりゃよかったね」
『だろ、だろ? あ、〈マーチ〉が替わるって』
「へいへい。──あ、どうもはじめまして。笹浦です」
左右田そうだです。マーチでいいよ』
 で、そん時は深く考えずに、とりあえずさっきの推測、ジューナナがメールつかえねーこととか、地図は信用ならねーとか、ブログを妨害すればいいんじゃねえのとか、そのへんのことを〈マーチ〉に伝えといた。
 そのあとでオレ、妹さんの助言にしたがって、しのぶさん誘導作戦を開始することにしたわけですわ。

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伊隅賢治[12:50−12:54]

 今日はボクのラッキー・デイに違いない。
 ボクが〈トウコ〉からのメールを受け取ったのは、西荻窪への途中、阿佐ヶ谷の手前だった。〈マリエ〉が中野で徳永を待ち伏せする。徳永の乗っているはずの電車の到着予定時刻は十二時五十分。急行できる者は応援にむかってほしい。等々。
 まさに最適のタイミングだった。〈マリエ〉よりも一歩早く、ボクとミツハシは中野に到着できる。だから作戦を考える時間もあったんだ。
 心中の決行時刻が夜の九時まで延びたことは、その前に知らされていた。半日は短いようで長い。途中でどのようなアクシデントがあるか、わかったものじゃない。そこでボクは当初の計画を一部変更することにした。徳永の居場所を把握するために、夜まで尾行し続けるのもいいけれど、〈捜索隊〉の連中が動き回っている以上はむしろ一緒に行動したほうが安全で確実だ(偶然に出会った風を装ってもいいし、やつがどうしても逃げようとするなら状況を説明してやるのも一つの有効な選択肢だ……君の自殺予定は知れ渡っている、捜索している連中もあちこちにいる、だけどボクは君の味方だ、君の自殺を止めるつもりはない、それどころか連中から逃げる方法を知っているんだ、と言って)。
 最大の焦点は、眼前の〈マリエ〉をどうやって排除するか。そこにある。
 ところがこの時、僕の懐にはすでに最高のワイルドカードがあったんだ。ミツハシというカードが。こいつで〈マリエ〉を足留めすればいい。
 ボクが(阿佐ヶ谷からひきかえす間に)ミツハシに指示したのは、以下のようなことだった。
 ……車椅子の女子高生が、中野駅で徳永をつかまえようとしている。そいつが〈17〉イチナナである可能性は低くない。見た目に騙されちゃいけない。そもそも彼女が本当に障害者なのかどうかも、今のボクらには確かめようがないんだから。だから、おまえはそいつをホームで足留めしてくれ。できるだけ暴力は使わないように、でも万一の場合は、偶然を装って車椅子を壊すくらいのことはしてもいい。ボクはその隙に徳永を探す。はぐれた場合は、あとでボクの携帯に連絡をくれ。くれぐれも〈捜索隊〉の連中に気を許すな。誰が殺人鬼〈17〉なのか、まだわからないんだ。
 駅のホームで、ミツハシは期待以上の活躍をしてくれた。あの赤ジャケットたち(たぶん例の新宿の連中の仲間なんだろう)にも、飛び入り助演賞を贈ってやりたいくらいだ。
 たしかに、ここでミツハシを使ってしまったのは勿体なかったかもしれない。まだまだ有益な働きを期待できたかもしれない。けれど、ボクは今や大胆な行動者だ。瞬間の判断者だ。切り札は、出し惜しみしちゃいけない。ボクの目の前に獲物がいた。ならば、猟犬をすべて解き放ってでも獲物を手に入れるべきだ(それに、ミツハシを再利用する方法が完全になくなったわけでもない。そのための準備もボクは怠っていない)。
 素晴らしい。なんて素晴らしいんだ。

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ケイクス

この連載について

15×24(イチゴーニイヨン)link two 大人はわかっちゃくれない

新城カズマ

高校2年生、徳永準の自殺予告メールがネットに流出しました。彼を救うべく懸命に彼を探す捜索隊、否応なしに巻き込まれる者、別の思惑を抱くもの、そして殺人鬼まで……!? 15人24時間の大晦日の長編群像サスペンス、こっからが本番です! 読み...もっと読む

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