現在が「過去の体験」に負けるとき

重度の自閉症を抱えながらも、社会を鋭く見つめている作家・東田直樹さんの連載です。
一般的に、私たちは恐ろしいことに遭遇したとき、その瞬間にもっとも驚き、恐怖を感じます。しかし大抵の場合、それは時間の経過とともに、「過去の体験」として薄れていきます。
一方、東田さんのような自閉症者のなかには、それとは別の感覚や反応があるようです。彼らが突然、パニックに陥るとき、何が起きているのでしょうか。

 ぞっとするほど怖い目に合ったことはありませんか。

 僕は以前、車にひかれそうになりましたが、その時には本当に肝を冷やしました。
 経験した場面と言葉を結びつけて言葉の意味を考えることがあります。自分が体験して初めて納得できるのです。

「ぞっとする」は、身震いするほど怖いというイメージでしたが、実際にそういう場面に遭遇すると、人はなすすべもなく身動きできなくなるだけなのだと知りました。

 怖いとか、驚くなどの感情も働かず、自分が置かれている状況を、もう一人の自分が別のアングルからながめている感覚です。
 行動のコントロールがうまくできないので、僕には自閉症の僕のことを、いつも客観的にながめている自分がいます。

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跳びはねる思考—22歳の自閉症作家が見た世界

東田直樹

「僕は、まるで壊れたロボットの中にいて、操縦に困っている人のようなのです。」 会話ができないもどかしさや意に沿わない行動をする身体を抱え、だからこそ、一語一語を大切につづってきた重度自閉症の作家・東田直樹。 小学生の頃から絵本...もっと読む

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