BLマンガの秘境 vol.2 お前はすでに読んでいる!男も楽しめるボーイズラブの魅力

男同士の恋愛を描く「ボーイズラブ」の世界。基本的には女性が描き、女性が読むことの多いジャンルですが、実は男性でも、BLが琴線にふれる人は少なくないのでは……? 腐男子道に足をつっこみかけている作家・海猫沢めろんさんが、BLの話をいっしょにできる友達がほしいんだ!という個人的事情により、BLに造詣の深い社会学研究者・金田淳子さんを訪問。男性にもひびくボーイズラブの魅力を根堀り葉堀り聞き出します。『少年ジャンプ』に載っていたあのマンガにドキドキしたという方、必読ですよ。

キエエエエ!ゴールポストから三角飛びでお送りしているこの企画!BL!それは男子が踏み入れることが困難な禁断の領域!だがしかし……そこへ踏み込んだとき……おれのなかの封印されていた記憶がよみがえった!絶愛!BRONZE!JUNE!終わソン……うう……兄さん……なんだか頭が……頭がいたいんだ!そんなことはどうでもいいからおまえも今すぐBLという名のボールを追いかけろ!おれたちが読んできた少年漫画にだってすでにBL要素はつまっていたんだよ!嘘じゃない!読めばわかるさ!とりあえず第二回目!まずは貴腐人のBL初体験から!

BL研究者はいかにして腐女子となったか?

海猫沢めろん(以下、めろん) そもそもなんで金田さん、BL読み始めたんすか?

金田淳子(以下、金田) 小学校2、3年のとき、地元の公民館に『風と木の詩』(注1)が置いてあったんだよね。その一番エロい巻が、私の小学校の女子の間でものすごく回し読みされていて、それを読んだのがきっかけ。でも、当時はジルベールを女の子だと思ってたな。
注1:竹宮惠子(当時は「竹宮恵子」)の漫画作品。19世紀末フランスの寄宿生の学院を舞台に、ジルベールとセルジュという2人の少年の切ない恋愛が描かれ、少女漫画誌掲載ながら、「少年愛」を真正面から扱い、当時の読者に衝撃を与えた。

めろん え、画を見たらわかるんじゃないの?

金田 だって、裸が描いてあってもちんちんが消えていて、性別がわからないんだよ。そのころ『パタリロ!』(注2)も読みだしたんだけど、マライヒのこともしばらく女だと思ってた。
注2:魔耶峰央の漫画作品。架空の国・マリネラの国王パタリロが、側近のタマネギ部隊や、イギリスの諜報機関MI6の少佐バンコランやその愛人マライヒなどを巻きこんで起こす騒動を描く。さまざまな少年愛漫画のパロディがふんだんに盛り込まれている。

パタリロ! 91 (花とゆめCOMICS)
パタリロ! 91 (花とゆめCOMICS)

めろん 考えてみたら『パタリロ!』ってすごいよね。男同士で普通に妊娠するマンガ『花とゆめ』でやっていたっていう。しかもアニメ化もしていたよね。

金田 地元富山県では、ただの噂かもしれないけど、「同性愛はいかん」なんてテレビ放送が中止されたよ……。

めろん 同性愛を取り上げているってだけじゃなくて、スパイものかつギャグものかつ王族ものでもあるという……カオスすぎるんですよ……。

金田 著者の魔耶峰央さんが、『風と木の詩』のような、24年組(注2)と呼ばれる作家さんたちが描いた耽美な世界が大好きな男の人なんだよね。萩尾望都さんのギムナジウムもののパロディなんかが何回もでてくる。それで、私も、『パタリロ!』のなかで何回も何回も「美少年」という言葉が出てくるのを読むうちに、「ああ、マライヒって男なんだ!男同士の恋愛なんだこれ!」って気づいたんだよ。「だがそれがいい!」って思って、積極的にBLを求めていくようになった。そういう人、他にも結構いるんじゃないかな。
注2:昭和24年(1949年)頃の生まれで、1970年代に少女漫画の革新を担った日本の女性漫画家達を指す。萩尾望都、竹宮惠子、大島弓子など。

めろん そうか。男はまず『パタリロ!』を読めばいいのかもしれない。

金田 というか『パタリロ!』のファンっていまでも男性がすごく多いんですよ。

めろん 『パタリロ!』が好きなら、BLにも抵抗なく入れるかもしれないと。

金田 うん。BLに興味あるかもっていう人は、とりあえず『パタリロ!』を読もう。

男も知らずに読んでいた!ジェンダーがゆらぐ少年マンガ

めろん そもそも、自分がBLに興味あるかどうかよくわからないって人もいるかもしれないよね。でも、男子たちがふだん読んでいた少年マンガの中にBL的なものってあったと思うんだよね。たとえば、『変 HEN』(奥浩哉)は、ある意味BLっぽいと言えなくもない。

HEN 1 (集英社文庫―コミック版)

金田 私は、BLの醍醐味のひとつって、ジェンダーの揺らぎを楽しむところにあると思っているんだけど、『変 HEN』もその文脈にはあてはまるよね。私も、最初に読んだときは、一体これは何なんだろうなぁって得体の知れなさを感じていた。『ヤングジャンプ』で連載されているときの立ち位置って、どうだったんだろう。

この続きは有料会員登録をすると
読むことができます。
cakes・note会員の方はここからログイン

1週間無料のお試し購読する

cakesは定額読み放題のコンテンツ配信サイトです。簡単なお手続きで、サイト内のすべての記事を読むことができます。cakesには他にも以下のような記事があります。

人気の連載

おすすめ記事

ケイクス

この連載について

初回を読む
マンガは読書に入りますか?

海猫沢めろん

作家の海猫沢めろんさんが、谷根千での暮らしを綴るとともに、日々読んだマンガを紹介する月イチ連載。小説の執筆からアイドルの曲の作詞まで、縦横無尽に活躍する海猫沢さんのセレクトは、次に何がとびだすかわからない幅広さ。手に取って読めば、新し...もっと読む

この連載の人気記事

関連記事

関連キーワード

コメント

kaneda_junko ちなみにヒロ様の写真を載せてる雑誌は、2010年11月号の「ユリイカ 猫特集」(猫動画について寄稿しています)http://t.co/2o54Etjm22 と、ウェブでは海猫沢めろんさんのBL記事です!こちらの写真は今すぐ見れます→https://t.co/IY14LjebCr 4年弱前 replyretweetfavorite

uminekozawa 男子だってビッチになりたいだろ!!!? 貴腐人・金田淳子が男にBLをすすめる理由 4年以上前 replyretweetfavorite

marcelgruenauer 「BL研究者」って楽しい仕事らしいね。https://t.co/HhLjxR0uZt 4年以上前 replyretweetfavorite

Jinzenjiii 「男子だってビッチになりたいだろ!!?」 4年以上前 replyretweetfavorite