素敵な待ち合わせ

街がクリスマスムードに染まるこの時期。幸せそうな顔でデートをする恋人たちであふれかえります。今回の林伸次さんのコラムは、そんなデートの始まり「待ち合わせ」について。バーのカウンターから、待ち合わせしている人たちを眺めるのが好きな林さん。そんな林さん胸を撃ちぬいた、取っておきの待ち合わせのお話です。

彼女が待っているのはどんな男性?

いらっしゃいませ。
bar bossaへようこそ。

当店はバーという性格上、待ち合わせによく使われます。例えば6時に女性が一人で、「待ち合わせなんですけど、後でふたりになります」と言いながらお店に入ってきます。軽くて高価そうなコートをお預かりすると、下には濃いブルーのワンピースを着ています。持っているものは小さいバッグだけなので、これから近くの東急文化村でオペラを見るのか、それとも松濤の方のどこかのお屋敷でちょっとしたパーティがあるのかもしれません。

彼女が「グラスでシャンパーニュを下さい」と頼みます。僕は今日の一杯目のシャンパーニュをグラスに注ぎ、彼女のテーブルに持っていきます。すると彼女は鏡を取り出して、自分のメイクがどんな状態なのか気になってしょうがないご様子です。

彼女はどんな男性を待っているのでしょうか? 彼女は見たところ30代前半くらいだから、普通に考えて40前後の男性でしょうか。まさか彼女よりも若い男性がバーで待ち合わせなんてそんなお洒落なことはできないでしょうし。

あ、彼女が化粧室へと向かいました。ヘアスタイルをもう一度チェックしているのでしょうか。それとも。なんて僕が考えていると、男性がお店に入ってきました。なんだ、常連の中島さん(仮)だったんですね。僕が「あれ、中島さん、こんばんは」って大きな声をかけようとすると、中島さんは人差し指を立てて「シー!」というポーズをします。

そして中島さんは化粧室の前で彼女が出てくるのをこっそり隠れて待っています。僕と中島さんは共犯者になって、今から2分後に、彼女が「キャー! びっくりした。もう」と言ってる姿を想像して笑ってしまいます。

僕はこんな風に「男女の待ちあわせのシーン」を眺めるのが大好きです。彼女はどんな男性を待っているんだろう。そして待っている間、彼女はどんなことを考えているんだろうと想像するだけで楽しくなってきます。

胸を撃ちぬいた彼氏の言葉

先日、渋谷駅の井の頭線の改札で妻を待っていたら、僕の隣で、誰かを待っている女の子がいました。

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ワイングラスのむこう側

林伸次

東京・渋谷で16年、カウンターの向こうからバーに集う人たちの姿を見つめてきた、ワインバー「bar bossa(バールボッサ)」の店主・林伸次さん。バーを舞台に交差する人間模様。バーだから漏らしてしまう本音。ずっとカウンターに立ち続けて...もっと読む

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コメント

show6volta 「すごく良い買い物したね」ズドン!やられたっ!ずっと読んでたくなる文章だけど、読めば読むほどコタツから出たくなくなるのはなんで? 4年以上前 replyretweetfavorite

manpakudou この待ち合わせの彼にときめく乙女心は年齢、性別関係ナイですね。描写がすてきで、脳内少女漫画で再生されました。 4年以上前 replyretweetfavorite

sadaaki ぼくもこの待ち合わせ女子になりたいです。この彼氏のセリフ、素敵すぎる。 5年弱前 replyretweetfavorite

afafro 気の利いた一言を言える系男子になりたいと思う、今日この頃。→ 5年弱前 replyretweetfavorite