ほぼ日P(ボカロP)
第4回 Track01 Ceremony
PHP研究所から、人気ボカロ小説の新作をcakesで配信です!
正体不明の男たちに追われた新とキリコだったが、なんとか相手を巻いてたどり着いた「株式会社シムラクラム」。そこは地下空間に建てられた古いビルで……?!
初音ミクをはじめ、今や70億円を超えるともいわれる「ボーカロイド市場」。一時ネットで話題となった「人気ボカロP(ボーカロイド楽曲の制作者)は企業による捏造だった!?」という陰謀論に着想を得た小説、『シンキロウプロジェクト』の一部を公開します。
あれこれ疑問に思いながら入ったビルの中は意外と普通だった。
もちろん戦前のものと思われる建物の中は暗く、廊下は昔の日本映画に出てくる軍の建物や高度成長期の企業みたいなリノリウム張りだ。地下空間に作ったんだから当たり前なんだけど、窓のない廊下は見る者を重い気持ちにさせる閉塞感があった。
特殊な点は、廊下のあちこちに防火用っぽい隔壁があること。もちろん、普通のビルにだって防火扉はあるが、ここの隔壁は一般的な防火用よりも厳重に見える。きっと、これもセキュリティの一部なんだろう。“敵”の侵入を想定した造りだということなのだろうか。
「ちょっとここで待っててね」
キリコさんは部屋を後にした。
ふーん。通された部屋は、見る限りは普通の会議室っぽい感じ。時代がかった外見と違って内装は普通のオフィスビル的な雰囲気だ。何となく圧迫感があるのは天井が低いせいなのかな。もともとオフィス用に設計されていない建物を現代風に使おうとすると、床の上に各種配線を施すためにもう一層配線用の床を敷いて嵩上げすることがありらしい。天井が低く感じるのはそのせいかもしれない。会議室の机とか椅子とかはわりと今風な感じでそんなに違和感はなかった。
こんこん。
「失礼します」
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この連載について
ほぼ日P(ボカロP)
PHP研究所から、人気ボカロ小説の新作をcakesで配信!
病気になりそうなほど眩しい日差しが照りつける真夏のアキバ。静岡から上京した加藤 新(かとう あらた)はある会社の面接試験を受ける。それは「株式会社シムラクラム」が推進す...もっと読む
著者プロフィール
ボーカロイドを使用した楽曲を制作するボカロP。「ほぼ日刊イトイ新聞」さんとは何の関係もないが、2009年4月8日の初投稿から凄まじいペース(ほぼ日刊)で投稿していたことから、ニコニコ動画で、「ほぼ日P」と呼ばれるように。時流に乗った最新の時事問題をテーマにした作品に定評がある。Yahoo!知恵袋に投稿された質問をテーマに制作した『家に帰ると妻が必ず死んだふりをしています。』は人気を博し、170万再生を突破しており、このテーマを元に漫画化もされている。2013年9月時点で350曲を超える楽曲をニコニコ動画に投稿している。
ほぼ日P[プロダクション]http://www.hobonichip.com