シンキロウプロジェクト

第3回 Track01 Ceremony

PHP研究所から、人気ボカロ小説の新作をcakesで配信です!
「ボーカロイドの登場で、好きな音楽を作る自由、好きな音楽を選んで聴く自由――『音楽の自由』を私たちは手に入れられたのよ」。キリコの言葉に、新は何を思う?

初音ミクをはじめ、今や70億円を超えるともいわれる「ボーカロイド市場」。一時ネットで話題となった「人気ボカロP(ボーカロイド楽曲の制作者)は企業による捏造だった!?」という陰謀論に着想を得た小説、『シンキロウプロジェクト』の一部を公開します。

「音楽の自由……ですか?」

「そうよ。好きな音楽を作る自由、好きな音楽を選んで聴く自由。もしかしたら今の10代の子にとっては当たり前のことなのかもしれないけど、昔はごく一部のプロが作るものにしかその自由はなかったのよ。そう考えると凄いことだと思わない?」
 そんなこと考えたこともなかった。かっこいい音、しびれるような音を作ってさえいれば、いつか誰かから認められてプロになれる。そう思っていた。「音楽の自由」—か。確かに当たり前に思ってたけど、もし無くなってしまったら困るんだろうな。

 それでもやっぱりボカロは好きになれない。人間の声、自分の声で感動させたいよな……。
「個人的にはボカロはあまり好きになれません」
「そうね、それでいいと思うわ。好きなことを仕事にするのは、必ずしも幸せとは限らないものね」
 なぜかキリコさんは少しだけ困ったような顔をしていた。キリコさんも今の仕事が好きなわけじゃないのかもしれないな。ところで結局、何の会社なのか全然聞いてなかったんだが……。
「あ、あのぉ……」
「静かに!」
 キリコさんが小さな声で質問を遮った。その声にはそれ以上の質問を許さない厳しさが伴っていた。
「新くん。今のスピードのまま後ろを振り返らずに聞いてね」
「後ろ—ですか?」
 ゲシ! 痛ぇ! 思わず振り返りそうになった僕の脇腹にキリコさんの肘が入る。

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ほぼ日P(ボカロP)

PHP研究所から、人気ボカロ小説の新作をcakesで配信! 病気になりそうなほど眩しい日差しが照りつける真夏のアキバ。静岡から上京した加藤 新(かとう あらた)はある会社の面接試験を受ける。それは「株式会社シムラクラム」が推進す...もっと読む

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