CDジャケットはどんな存在ですか?
Q. 私たちはCDジャケットのデザインもしているのですが、音楽を作る人たちにとってジャケットというのはどういう存在なんですか?
曽我部:ジャケットには作り手のメッセージがわかりやすく出ますよね。凄く内容に沿ったものを出す人もいれば、あまり深く考えずに顔の写真にする人もいる。例えば、ローリング・ストーンズのジャケットなんかを見ると凄くファッショナブルで、トガッたアートディレクションがされていて、時代の先端にいたいんだなというのが伝わってくるし、一方で、ニール・ヤングみたいな人は、見てくれは全然気にしないんだなとか(笑)。最近だと、アンダーグラウンドでダンスミュージックをやっている若手とかには、コスト削減という面もあるのでしょうが、工場から届く白や黒のジャケットのまま、ラベルのところにタイトルやアーティスト名だけを入れて出荷してしまう人もいる。それだけ自分のネットワークに対する信頼があるのだろうし、そもそも不特定多数に向けているわけではないというスタンスが感じられて面白いですよね。
Q. その中で曽我部さんにとってジャケットはどういう位置付けになるのですか?
曽我部:その時の自分が出せたらいいなと思っていて、あまりジャケットには重きを置かないようにしています。ジャケットで判断してもらいたいくないという気持ちがあるので、その時の自分の写真が載っているくらいのバランスが僕にはちょうどいいですね。
Q. CDジャケットを作る仕事は、大袈裟に言うとその人の人生がかかっている感じがするんです。たとえ大きなレコード会社に所属しているバンドで、その後ろにたくさんの人たちが関わっていたとしても、やっぱりそのバンドのメンバーにとっては、人生の何年かの中の重要なポイントになっていて、それを想像すると凄くやりがいを感じます。
曽我部:そういう意味でいまミュージシャンは恵まれていますよね。例えば、70年代のジャマイカなんかだと、ミュージシャンの知らないうちに適当にレコードが出ていたりするんですよ(笑)。デザインも凄くラフだし、ちゃんと印刷工場で刷れなくて、ほぼ真っ黒なジャケットになってしまったとしてもそのまま出てしまう。しかも、裏ジャケに書かれている曲目も3割くらいは間違っていて、収録曲が全然違うなんてこともザラなんです。ある意味ミュージシャンの人権なんか無視されているんだけど、そこに凄い迫力やロマンを感じる(笑)。かなりマニアックな楽しみ方だとは思いますが、僕らは、アートディレクターさんが親身にアーティストのことを考えてくれるようなジャケットの作り方しか知らない。だからこそ、勝手に作られてしまうようなものや、誰も意図しなかったものが事故的に生まれたりするという状況も見てみたいなと思ったりするんです。
曲はいつ完成するのですか?
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