年金制度はもうボロボロ
民主党が政策仕分けで年金支給額の減額を提言しました。その前には厚生労働省が、年金支給開始年齢を、現在の65歳から70歳(または68歳)に引き上げることを検討しているとも報じられました。日本の年金はいったいどうなっていくのでしょうか。
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日本の年金制度は賦課方式で、現役世代が退職世代に「仕送りをする」仕組みです。この方法は経済成長で全体のパイが大きくなっているときにはとてもうまくいきましたが、少子高齢化で現役世代の負担が大きくなるとたちまち行き詰まってしまいました。
年金制度が破綻しかけているのは日本社会の構造的な問題なので、政治家や官僚だけを批判しても問題はなにも解決しません。日本経済が絶好調だった70年代や80年代に年金制度を個人別の積立方式に替えておけばこんなことにはならなかったのでしょうが、いまさらそんな愚痴を言っても詮ないばかりです。
年金制度を守るためにどうすればいいのでしょう。やるべきことは、子どもでもわかります。破産を防ぐには、収入を増やすか、支出を減らすかしかないのです。収入を増やすもっとも簡単な方法は、税金を上げることです。そこで小泉政権は、将来の消費税増税を財源として、基礎年金の2分の1を国庫負担にすることに決めました。
ところが増税のほうはうまくいかず、けっきょく民主党政権は、国庫負担だけを先行させ、国債を増発して赤字を穴埋めするほかなくなりました。そんなこんなで、国の社会保障関係費は約30兆円と、国家予算の3分の1を占めるまでになってしまいました(年金支出は約10兆円)。
そうなると、収入を増やすには年金保険料を増額するほかありません。しかし国民年金は、保険料を上げると未払いが増えるという悪循環に陥っているため、これ以上の引上げは事実上不可能です。そこで厚労省は、文句を言えないサラリーマンに目をつけて、企業と折半というかたちで高額所得者の負担を上げようとしていますが、こんな小手先の改革では焼け石に水なのは間違いありません。
「100年安心」は10年もたなかった
年金収入を増やすのも大変ですが、支出を減らすのはさらに困難です。高齢者の数はこれからもどんどん増えていきますから、年金の支払額は膨張していくばかりです。だからといって高齢者の多くは生活を年金に依存しているので、いきなり支給額をカットするわけにもいきません。
そこで考えついたのが「マクロ経済スライド」方式(※)で、簡単にいうと、インフレ(物価上昇)になっても年金支給額をそのまま上げない仕組みのことです。一杯300円の牛丼が310円になれば、年金も10円分だけ増えないとこれまでと同じ生活ができません。ところがこの方式では(たとえば)7円しか増額せず、本来は支払うべき3円分を節約しようというのです。
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