未来予測・リフレ派・MAKERS(メイカーズ)

山形浩生さんの連載第三回目は、経済問題から腹の虫までどーんと論じられています。そして、次回以降、更新頻度も上がるかも!? そうそう、先日出た山形さん監訳の『邪悪な虫』『邪悪な植物』(ともに朝日出版社)は、インパクトあるエピソードが続々の濃い本ですよ!

ご無沙汰。月刊なのでご無沙汰はしょうがないんだが、週単位で課金されるのに月単位での更新はひどいという声をいただいたので、今後少し更新頻度を上げるかもという噂もあるとかないとか。どうなりますやら。

さて前回は小説特集のような感じで、特に伊藤&円城『屍者の帝国』(河出書房新社)に字数を割いたんだが、お読みいただけましたかな? 読んだ方はその中で、カラマーゾフの片割れくんがアフガニスタンの洞窟で、あらゆる死者をよみがえらせてどうのこうの、と口上を述べるところがあったのを漠然とご記憶かと思う。

あのあたり、ぼくは伊藤/円城の創作だと思って軽く読み流していたんだが、そこに出てきたフョードロフという人物にふと興味を覚えて、彼の論文が出ているセミョーノヴァ&ガーチェヴァ編著『ロシアの宇宙精神』(せりか書房)を手に取ってぶっ飛んだ。なに、あれは創作ではなくて、フョードロフは本当にそんなことを主張していたのか! とにかく、人類はこれからもっと進化し、卑しい動物の限界を超えて死も克服した存在になるのだ! しかも今いる人が不死になるだけじゃダメで、死んだ人もみんな復活してそこに加わるのじゃ!

とにかく、進化論とキリスト教神学がまるっきり勘違いした形で融合したキXXイぶり全開。その系列につながる他の人は、いまの人は他の生物を犠牲にして生きているがそれもいずれ脱して、人間も光合成と地面からの栄養でいきる、マジな植物人間になるべきで云々とか、もうむちゃくちゃ。こんな異常なことを考えていた連中がいたのか! 伊藤はぼくもどきだと書いたけれど、おみそれしました。ぼくの知らないこんな大ネタがあったとは。頭のたがを外すにはうってつけの本なので、異常な人の異常な思想が好きな人は是非。

さて、同じ未来を考えるのでも、もう少しまともな本。今回は少しビジネスチックにいきます。英『エコノミスト』編集部編『2050年の世界』(文藝春秋)。この本は、日本が三流国に転じるという予測ばかりが大仰に取りざたされて紹介されてしまい、とても不幸だったと思う。

2050年の世界 英『エコノミスト』誌は予測する
2050年の世界 英『エコノミスト』誌は予測する

でも本書において、そんなのは枝葉にすぎない。読者諸賢はもっとちゃんと全体を読んでほしい。人口、科学、技術、ビジネス、資源、その他いろんなテーマについて、専門家たちが本当にきちんとマクロな予測を展開している。2~3年ほどの流行でクラウドがどうしたとか、アップルの新製品がなんだとか、そういうレベルでのすぐ廃れる予測なんか追いかけてもしょうがないけど、こういう本当に大きなトレンドはなかなかずれないし、また読者諸賢が今後仕事をする中でも重要になってくる。

また、予測をしつつその予測の限界についてもきちんと説明し、その一方でいたずらに恐怖や災厄を煽るような予測本に対し、これまで世界はいろんな予測よりずっとよい方向に進んできたことを指摘し、未来に希望を持たせてくれる。是非とも読んでおこう。

そして日本の没落だって避けられる。こういう予測は、過去数十年のトレンドをのばして得たものだ。日本の過去数十年をのばせば、経済的にはよくて横ばいの結果しか出ない。でも普通に景気回復のための手立てを講じれば、日本だってまだまだのびしろはあるはず。それがいまの人為的な不景気でどんどん縮小しているのは事実だし、だからこそ不景気を何とかしないといけないんだけれど……。

これをお読みの方は、ぼくがリフレ派と呼ばれる一派なのをご存じだろう。不景気というのは、平たくいえばみんながお金を使わない状況だ。金は天下のまわりもの。ぼくがお金をつかわなければ、あなたの収入は減る。するとあなたも節約したがるので、こんどはぼくの収入が減る。すると……これが社会全体で展開されれば、不景気だ。それを解消するためには、だれかがみんなのケチぶりを蹴倒すくらいにどーんと金を使うことだ。

あるいは、みんながため込みたい以上にお金を刷って、さらにそれがこの先も続く(つまりインフレが起こる)と思わせることだ。今の日本はデフレなので、それを再びインフレにする、つまりはリフレということ。

これを書いた本はたくさんあって、拙訳クルーグマン『さっさと不況を終わらせろ』(早川書房)でもいいんだけど、日本に特化した本もたくさんある。岩田規久男、上念司、原田泰、飯田泰之あたりの本はなんでもいいからおすすめ。

そこで言われている話は決してむずかしいものじゃない。上で書いた不景気の説明を少し精緻にした程度だ。こうした日本のまともな不景気脱出に関する代表的な論客の一人、田中秀臣が麻木久仁子や田村秀男と書いた『日本建替論』(藤原書店)は、不景気対策を含め各種の経済問題を非常にシンプルに説明しているけれど、それを(どういう風の吹き回しか)田中秀臣と対談した、モデルの道端カレンが読んでブログに感想文を載せているけれど、立派。本のポイントはきっちり理解している。

日本建替論 〔100兆円の余剰資金を動員せよ!〕
日本建替論 〔100兆円の余剰資金を動員せよ!〕

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山形浩生

経済、文学、コンピュータなどの多方面で八面六臂の活躍をする山形浩生さん。その山形さんが月に一度、読んだ本、気になる現象について読者にお届けする密度の濃いレポートです。

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