文明の進歩って、僕に関係ありますか
茂木 日本と世界の比較を続けるけど、例えばPRISMという情報収集プログラムで、NSA(アメリカ国家安全保障局)が数百万人分の通話履歴やインターネット上の個人情報を、極秘に入手していたっていうニュースがあったでしょう。
Tehu はい、見ました。
茂木 元CIAのエドワード・スノーデンがそれを暴露して、さらにロシアのプーチンがその亡命を受け入れる。この感じってもう、日本国内でニュースになっていることと全然スケールが違う。しかもその情報収集にITの最新技術が絡んでいるんだよね。日本からこういう世界的にインパクトのあるニュースが出ることはまずない、とおれは思っちゃう。
Tehu 日本からは無理でしょうね。
茂木 じゃあ、Tehuはそれとは違うところで勝負しようと思っているってこと?
Tehu なんだろう……そもそも、そういうことって僕に関係あるんでしょうか。
茂木 うーん、おれは関係ある気がしてるんだよ。おれね、子どものころからなんとなく、文明の歴史の中で何が本質なのかっていうことを考えてきたんだ。
北川 子どものころからそんなことを(笑)。すごいなあ。
茂木 だから受験のときに、東大理三に進学するっていう選択肢は最初からなかった。メディカルスクールで医師免許をとるっていうのは、文明の歴史から見たら大したことじゃないと思っていたから。いまならiPS細胞とか、メディカルの世界でもおもしろいトピックがあるけどね。で、当時はアインシュタインの伝記を読んで、物理が世界の本質を解明すると思って、物理学を専攻した。そのあと脳科学に出会って、次は意識や心脳、クオリアの問題が文明の本質なんじゃないかって、嗅覚がはたらいたんだよね。
北川 なるほど。
茂木 同じ嗅覚をはたらかせると、いまITの世界ではNSA、ウィキリークスのあたりが、次の文明が生まれる「るつぼ」になってる感じがする。それに比べると、申し訳ないけど、アイドルがどうこうというのは、サイドラインだと思うんだ。文明ってものを前提に動いているコミュニティにいると、感じるものがぜんぜん違うんだよ。
北川 ハーバードにいたときのことを思い出すと、わかるような気がしますね。
茂木 まあそれは、おれの人間としての志向性だから押し付けることでもないんだけどね。でもSFCにはサイドラインで満足、幸せという人が多い気がする。
Tehu それでいいんじゃないですか。僕はそう思います。
茂木 それでいいと思うんだ。そうかあ。
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