第16回 アベノミクスと資産運用①

テレビや新聞、雑誌でも「アベノミクス」という言葉を見ない日はない今日この頃。株価は上昇し、市場も活気を取り戻したかに見えます。でも、この状況はいつまで続くのでしょうか。経済は活性化し、元気な日本が戻ってくるのでしょうか。 それとも、ハイパーインフレが訪れて、金融危機が起こるのでしょうか。 それは誰にもわかりません。ただ、最悪のシナリオに備えておくことが大切なのです。(『いきいき』2013年4月号より転載)

2012年末の総選挙で自民党が圧勝し、「強い経済を取り戻す」という安倍内閣が発足すると、株価が大きく上昇し、市場にはひさしぶりに明るい雰囲気が戻ってきました。しかしその一方で、「安倍バブルは一時の幻想にすぎない」とか、「アベノミクスで日本経済は破綻する」という経済学者もたくさんいます。いったい何が問題なのでしょうか。

安倍首相の信奉する経済政策が「アベノミクス」で、「インフレ率が2%になるまで日銀に際限のない金融緩和をさせる」ことを目指しています。国家が国民にお金を配ることを「財政政策」といいます。代表的な財政政策が公共事業で、国家が国債を発行して借金をし、事業主となって仕事を発注し、国民にお金を支払います。



それに対して「金融政策」で景気を刺激するときは、中央銀行が短期金利を操作して、安い金利でお金が借りられるようにします。野心のある企業家はそのお金を原資に新しいビジネスを始め、それによって市場が活性化して景気がよくなると考えるわけです。

ところが金利がゼロになってしまうと、中央銀行はこれ以上金利を下げることができません。これを「流動性の罠」といいますが、ゼロ金利では金融政策は役に立たなくなってしまうのです。しかし、これまで経済学では、「流動性の罠は現実には起こりえない」とされてきました。ゼロ金利でお金が借りられるのに、誰も借りようとしない、などということがあるわけがないからです。

しかし、1990年代後半から、日本でこの「起きるはずのない」ことが起きてしまいました。

ゼロ金利でも借金できないデフレ不況

ゼロ金利なのになぜ誰も、お金を借りようとしないのでしょうか? それは、借りたものは返さなくてはならないからです。返済時にお金が減っていると、当然、その損失は自分で埋め合わせなければなりません。

100万円をゼロ金利で借りて株を買ったら半分になってしまった—この場合は50万円の損失です。100万円を借りて喫茶店を始めたが失敗した—これだと100万円全額が損失です。こう考えると、なぜひとびとがお金を借りないかわかるでしょう。「デフレ不況」ではなにをやっても損するように思えて、どれほど金利を低くしてもそれを活用してもらえないのです。

なぜこんなことになったのかについてはいろいろ議論がありますが、「デフレから脱却しなければ景気は回復しない」ということについては専門家の意見は一致しています。問題は、どうすれば脱却できるか、です。インフレを起こすもっとも簡単確実な方法は「ヘリコプターマネー」です。日本は1000兆円という天文学的な借金を抱えていますが、それを2000兆円、3000兆円と増やしてヘリコプターからばら撒けば物価はものすごい勢いで上がります。

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