パート4.キャッチャー・イン・ザ・ステーション 西満里衣[12:49]徳永準[12:50]

自殺予告メールがきても、あたしは何もしなかった。薄情な人間だから? それがいちばん当たっているような気がする――とある大晦日、12月31日。高校2年生、徳永準の自殺予告メールがネットに流出しました。友人である笹浦耕は東京のどこかにいる彼を止めようと捜索隊を結成します。そこから始まる15人の24時間の物語。『おすすめ文庫王国2009』でライトノベル部門の堂々1位を獲得した『15×24(イチゴーニイヨン)』シリーズを2巻まで連日更新。読みはじめたら止まれない、ライトノベル史上〈もっとも長い一日〉を味わってみてください。(イラスト:箸井地図)

西満里衣[12:49]

 ……来た!
 JR中央線中野駅、下りホーム。それにしてもホームが多い。なんで八番線まであるのよ。大きすぎるわ、東京ったら! そのくせエレベータがないなんて!
 オレンジ色の車両がすべりこんでくる。十二時四九分三十秒。微妙に早い。いいえ、ひとつ前の電車が遅れてるのかも。としたら次の電車ってことになるけど。
 降りてくる乗客を観察。狭いホームを、昇降口と駅員事務所がさらに狭くしてる。視界が効かない。おばさん、おばさん、おじいさん。やっぱり東京は人が多い。けど高校生男子らしき者はいない。白のダウンジャケットも。ノブさんの情報、間違いないはず。でも、もしも間違ってたら? 白のダウンじゃなかったら?
 男子高校生(それとも大学生?)、発見。ホームの東端。でも、違う。あんな大男じゃない。それに二人連れだ。凸凹コンビ、大男とメガネの。徳永はメガネかけてない。瞬きして記憶をリフレッシュ──あのホームページの個人データ、身長一七一センチ、体重五五キロ。どこだ? どこにいる?
 降りてこない。乗るべきか?
 車両に近づく。車掌が半身を出したまま、わたしを危なっかしそうに見つめてる。乗って探すか。でも、この電車じゃなかったら。わたしが乗ると同時に降りて来たら。
 どうする?
 この電車か、それとも次か? 白のダウン、見当たらない。赤いジャケットが数人だけ。どっちだ? まだ車内にいるのか? 次の電車か? 二つにひとつ!

 ──いた!

西満里江[12:50]へ進む


徳永準[12:50]

 中野駅の降り口は端にあったと思ったけど、あれは東西線のほうだったのか。まあいいや、そんなに急いでるわけじゃないし。電車が止まる。ドアが開く。おばあさんたちを先に行かせて、ぼくはゆっくりと下車。
 人混みは、まだそれほどでもない。車椅子の女の子がいる。迷ってるみたいに、あちこち見回してる。どうしたんだろう。助けてあげたほうがいいかな。駅員は……見当たらない。ボクは彼女のほうへ近づく。細いピンク縁の眼鏡、ポニーテイル、藍色のコート。こっちをふりむいた。
 鋭い目つき。
 と、その時、誰かが叫んだのをぼくは確かに耳にする。
「……徳永!」

徳永準[12:50]へ進む


西満里衣[12:50]

 徳永、ホームの東端! 凸凹コンビのすぐ近く。わたし、ホームの真ん中よりちょっと東より。距離、十五メートル弱。
 ──つかまえられる!

この続きは有料会員登録をすると
読むことができます。
cakes・note会員の方はここからログイン

1週間無料のお試し購読する

cakesは定額読み放題のコンテンツ配信サイトです。簡単なお手続きで、サイト内のすべての記事を読むことができます。cakesには他にも以下のような記事があります。

人気の連載

おすすめ記事

ケイクス

この連載について

初回を読む
15×24(イチゴーニイヨン)link one せめて明日まで、と彼女は言った

新城カズマ

「なんで自殺しちゃいけないの?」とある大晦日、12月31日。高校2年生、徳永準の自殺予告メールがネットに流出しました。友人である笹浦耕は東京のどこかにいる彼を止めようと捜索隊を結成します。そこから始まる15人の24時間の物語。『おすす...もっと読む

この連載の人気記事

関連記事

関連キーワード

コメント

Tweetがありません