パート4.キャッチャー・イン・ザ・ステーション 私市陶子[12:23−]

自殺予告メールがきても、あたしは何もしなかった。薄情な人間だから? それがいちばん当たっているような気がする――とある大晦日、12月31日。高校2年生、徳永準の自殺予告メールがネットに流出しました。友人である笹浦耕は東京のどこかにいる彼を止めようと捜索隊を結成します。そこから始まる15人の24時間の物語。『おすすめ文庫王国2009』でライトノベル部門の堂々1位を獲得した『15×24(イチゴーニイヨン)』シリーズを2巻まで連日更新。読みはじめたら止まれない、ライトノベル史上〈もっとも長い一日〉を味わってみてください。(イラスト:箸井地図)

私市陶子[12:23−12:45]

 先生、私たち喫茶店を追い出されてしまいました。
 たしかに『携帯電話の御使用は御遠慮ください』という張り紙はありました。私とノブさんはひっきりなしに電話を使っていました。けれど、さほど他にお客さまがおられるわけでもありませんのに、いきなり「出ていってください」というのは、いかがなものでしょうか。
 だって私たちは、人助けをしているのですから。
「まあしょうがないでしょ、悪いのはこっちなわけで」とノブさん。
「それはそうなのですけど……」
 堀田さん風に表現しますと、私、少々ブーたれてしまいました。
 ですが、いたしかたありません。ともかく二人でノブさんのお宅へむかうことにしました。徒歩で十分ほどのところだそうです。私は迷惑にならないように、できるだけ大股で歩きます。そろそろコツがつかめてきたようです。これなら長い距離も歩けそうです──もちろん、ゆっくりとではありますが。
 あたりがお屋敷町になり、私たちは長い長い生け垣に沿って進みました。それがノブさんのお家なのだそうです。それにしても、おかしな話です。どうしてノブさんのお家であり離れであるのに、マーチさんに私の入出を拒む権利があるのでしょう。
 ノブさんを問いつめようかとも思いましたが、やめにしました。なぜってノブさんは、マーチさんを信頼しているのですから。十年来の親友、とも言っていました。信頼、親友、これは重みのある言葉です。学校をやめることになった頃、私自身、どれだけこの二つの言葉に支えられたことでしょう。ですから、これは私がとやかく口をはさめる事柄ではありません。それに、もしかしたら私が間違っているかもしれないのです。先ほども申しましたとおり、人を評価するのは大変なことなのですから。まだ会ったこともない方を云々するのは、慎まなければなりません。

 そしてようやく生け垣が途切れ、お屋敷の正門に到着する寸前でした。トオルさんからノブさんの携帯に連絡が来たのです。

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15×24(イチゴーニイヨン)link one せめて明日まで、と彼女は言った

新城カズマ

「なんで自殺しちゃいけないの?」とある大晦日、12月31日。高校2年生、徳永準の自殺予告メールがネットに流出しました。友人である笹浦耕は東京のどこかにいる彼を止めようと捜索隊を結成します。そこから始まる15人の24時間の物語。『おすす...もっと読む

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