​パート4.キャッチャー・イン・ザ・ステーション 笹浦耕[12:37−]

自殺予告メールがきても、あたしは何もしなかった。薄情な人間だから? それがいちばん当たっているような気がする――とある大晦日、12月31日。高校2年生、徳永準の自殺予告メールがネットに流出しました。友人である笹浦耕は東京のどこかにいる彼を止めようと捜索隊を結成します。そこから始まる15人の24時間の物語。『おすすめ文庫王国2009』でライトノベル部門の堂々1位を獲得した『15×24(イチゴーニイヨン)』シリーズを2巻まで連日更新。読みはじめたら止まれない、ライトノベル史上〈もっとも長い一日〉を味わってみてください。(イラスト:箸井地図)

笹浦耕[12:37−12:44]

 で、そのあと〈トウコ〉さんからメールが来たわけですよ。西のやつが東西線で追跡中って。
「……中野でつかまえるって、まじすか?」
『はいそうです。マリエさんがそろそろ到着している頃かと』
「一人だけ? 中野って、けっこーデカい駅ですよ。新宿にいる、えーとなんでしたっけ」
 ちなみにオレ、いつのまにか〈トウコ〉さんには敬語になってました。だってしょーがねーじゃん。もっと年上かと思ってたんだもん。
 オレ、年上の女性には優しいタチなのよ。
『トオルさんたちとは、連絡がつかなくなっています。こちらからはノブさんが移動中ですが、間に合いますかどうか』
「西荻窪から中野つったら……」えーと中央線でいくつめだっけ。西荻窪、荻窪、阿佐ヶ谷、高円寺、東高円寺──は丸ノ内線だっつーの。高円寺の次が中野だよ。「……なんとかなるんじゃないすか?」
『はい。本来でしたらそうなのですが、あいにくと』
「あいにくと?」
 しのぶさんのいる部屋のドアが開いたのは、その時だった。
 例の風邪ひいてる妹さん……ミユちゃんだかユミちゃんだかが、パジャマの上からピンクの毛布かぶったまんま、そーっと廊下横切って、トイレ入ってすぐ出てきた。
 オレ、ソファから軽く会釈。
 彼女は顔真っ赤で、すげー恥ずかしそうにお辞儀を返した。そらそーだ。トイレだもん。にしても痩せてんなあ。風邪が胃腸に来ました、ってやつですか。ご養生なさってくださいませ。
「あいにくって、なんかあったんすか……あ、ちょっと待ってください」
『え?』
 風邪ぎみの妹さん、なぜかこっちに近づいてきた。手にメモもってる。
 スヌーピーのメモ用紙に、かわいい丸文字で。

事情はだいたい聞きました。
早めに姉とデートに出かけたいなら
協力できますけど、どうでしょう?

 おおっと。
 これは意外な展開。
 妹さん、唇に指あててから、部屋のほうを指さした。しのぶさんに聞こえちゃまずい、ってことか。というわけでオレ、メモに書いて返事。

ぜひお願いしたいですけど
なんでまた?

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15×24(イチゴーニイヨン)link one せめて明日まで、と彼女は言った

新城カズマ

「なんで自殺しちゃいけないの?」とある大晦日、12月31日。高校2年生、徳永準の自殺予告メールがネットに流出しました。友人である笹浦耕は東京のどこかにいる彼を止めようと捜索隊を結成します。そこから始まる15人の24時間の物語。『おすす...もっと読む

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