パート4.キャッチャー・イン・ザ・ステーション 西満里衣[12:35]徳永準[12:45]

自殺予告メールがきても、あたしは何もしなかった。薄情な人間だから? それがいちばん当たっているような気がする――とある大晦日、12月31日。高校2年生、徳永準の自殺予告メールがネットに流出しました。友人である笹浦耕は東京のどこかにいる彼を止めようと捜索隊を結成します。そこから始まる15人の24時間の物語。『おすすめ文庫王国2009』でライトノベル部門の堂々1位を獲得した『15×24(イチゴーニイヨン)』シリーズを2巻まで連日更新。読みはじめたら止まれない、ライトノベル史上〈もっとも長い一日〉を味わってみてください。(イラスト:箸井地図)

西満里衣[12:35]

 ……五分前、飯田橋!
 わたしが東西線で乗り換え電車を待ってた時、徳永のやつは、地上のJRのホームにいたんだ!
 地上に! わたしの真上に!
「…………っっ!」
 つかまえられた。つかまえられたんだ!
 なのにわたしはバカみたいに、ぼんやり電車を待ってただけだった! 徳永が地上にいるのを知ったのは、五分も経ってからだった!
 わかってる。もちろんわたしには、どうすることもできたはずがない。東京メトロが、一乗客の都合で急停車したりバックしてくれるわけもない。
 でも、でも!
 わたしはケータイを、壊れるくらい握りしめる。トウコさんからのメールは画面に映ったまんま。

件名:──
JR飯田橋で目撃報告
がありました。以下、
愛さんからのメールを
転送します。……

「……次はー早稲田ー、わせだー」
 アナウンスの冷酷な声。今から飯田橋に戻る? でも、追いつけるはずもない。徳永のやつはもう中央線に乗ってるだろう。もういちどメールを見る。新情報……やつは一日周遊券をもっている。そして下りホームにむかっていた。行ける範囲は? わたしのパソコンが目覚めて輝く。都心の路線図データ。TXの中で落としておいたもの。あった。
 飯田橋から下りで五分。すぐに電車に乗れたとして……市ヶ谷–四ツ谷間。やつは今そこにいる。
 いるのに、わたしにはどうすることもできない!
 落ち着け。落ち着くんだ。
 徳永は中央線、わたしは東西線。──そうか。このままでいいんだ。
 当初のわたしの目的地は西荻窪だった。中央線の・・・・西荻窪。だから東西線にした。最速ルート、乗り換えもいちばん少ない。そして東西線は、中野で中央線に乗り入れてる。ここ早稲田から中野まで、所要時間九分。四ツ谷から中野までは──十五分!
わたしは、やつを、中野で待ち伏せできる・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 ──でも、もし徳永が途中下車したら? 他の路線に乗り換えてたら? やっぱり気が変わって東京方面へむかってたら?

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15×24(イチゴーニイヨン)link one せめて明日まで、と彼女は言った

新城カズマ

「なんで自殺しちゃいけないの?」とある大晦日、12月31日。高校2年生、徳永準の自殺予告メールがネットに流出しました。友人である笹浦耕は東京のどこかにいる彼を止めようと捜索隊を結成します。そこから始まる15人の24時間の物語。『おすす...もっと読む

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