在所惟信 [11:45]
で、〈マリエ〉からの新情報、ネット心中だって話なんですけど。
(……これ、どうやってマーチに伝えりゃいいんだ?)
俺もうパニクっちゃって。
だって、あいつはすっかり『徳永の狂言自殺』説になってるわけで。そもそもトウコさんと〈マリエ〉も『〈捜索隊〉の作業を妨害する女ども』でしたし。あんまりそうとも思えないんだけどなあ。会ってみたら、ふつうの女の子だったし。いや、お腹はふつうじゃなかったんですけど。まあ、その意味ではマーチの分析は正しかったんですよね。やっぱあいつはすげえ奴ですよ、ほんと。
で、この情報を、出所を言わずにそれとなーくマーチに分かるようにしむけるには……どうしたもんやら!
って、あんまり時間をくってるわけにもいかないですし、トウコさんも、なーんか不審感ばりばりな目でこっちのこと見てますし、俺もうほんと。
(やっぱ誕生日と血液型のことかなあ……いつもこうなんだよなあ……でも早めに訊いとかないと、あとでどんなことになるか分かったもんじゃないしなあ)
こういう時だけは、ちょっと
でもやっぱ、やばいでしょ。初めにわかっておかないと。
万が一、好きになっちゃったりするかもしんないし。
好きになって、つきあって、やっちゃってから、誕生日と血液型を知っちゃって、それからビックリするってのも。そっちのほうが最悪ですよ、まじで。
──やっちゃった後で、その相手の女の子が、腹違いの姉妹でしたって判明しちゃうのは。
あーまったく親父ったら。浮気相手の苗字くらい、ちゃんと全部メモっとけっての!
笹浦耕 [11:58−12:00]
「あ、もしもし。しのぶさん?」
『……コーくん!?』
「お願いあるんだけど。電話貸して」
『は?』
「これから徳永のド
さっきの寒気が、またやってきた。
やっぱこれ風邪じゃねーや。
オレだわ。
オレが身震いしてんだ。
『……じぶんのケータイ使えば?』
「通話記録に残したくないとこにかけたいんだ。親父に見つかりたくないの。だから自宅の電話もダメで」
電話代が高いから、っていう動機は省いた。だって恥ずかしーじゃん。いや、払うこと自体は恥ずかしくもなんともないんだけど。お金がないのよ、今月。バイトも休んじゃったし、年末年始けっこうピンチ。
でも通話記録のことは嘘じゃないよ。
オレがこれから電話したい相手は、親父に知られると、かなりやばいんだ。
『わたしんちの電話なら、好きなだけ長電話してもいいってわけ? 公衆電話は?』
「見当たんなかったし、そもそも現金の持ち合わせないし。それに今回の件で、オレだけがんばるってのもさ……ええと、つまりね。オレはベスト尽くすから。だからこそ、しのぶさんにも力を貸してほしいわけですよ。それともしのぶさん、何もしないで待ってるだけのほうがいい?」
『うっ』
やっぱしね。
しのぶさんの性格からして、この一言は効果あるはずだ。