パート3.せめて明日まで、と彼女は言った 笹浦耕[11:39]

あたしは直感する。明日の夜明けまでに、どちらかがこの世を去るだろう。あたしのおばあちゃんか、もしくは同級生の徳永か――とある大晦日、12月31日。高校2年生、徳永準の自殺予告メールがネットに流出しました。友人である笹浦耕は東京のどこかにいる彼を止めようと捜索隊を結成します。そこから始まる15人の24時間の物語。『おすすめ文庫王国2009』でライトノベル部門の堂々1位を獲得した『15×24(イチゴーニイヨン)』シリーズを2巻まで連日更新。読みはじめたら止まれない、ライトノベル史上〈もっとも長い一日〉を味わってみてください。(イラスト:箸井地図)

笹浦耕 [11:39]

 なんで無料電話かっていうと、そのためにはまず、さっきのメールの山のことを説明しなきゃいけない。
 あれを見直してるうちにオレが気がついたことってのは、四つあった。
(1)……徳永のド阿呆は、書きかけの遺書を、同じ美術部の四人にしかメールしてない。
(2)……九時半くらいから後のメール大量応酬は、〈マーチ〉とかいう奴のせいだ。こいつが返信をぜんぶccにしたおかげで、メールの数が増えた。受け取った全員が「なんだこりゃ」「なにがあったんですか」って返信したり、お互いに「こんなメールもらったけど、何か知ってる?」って連絡をとりあっちまった。
 しかも〈マーチ〉は、自分のところに来た問い合わせのメールも引き続き全員にccした。メールの嵐は、おさまるどころか大混乱。そりゃそうだろ、それまで会ったこともメアド交換したこともない奴から、「なにがあったんですか」メールが大量に送られてきたんだから。bccじゃないんで、自分のメアドも全員に公開されちゃってる。とうとう十時半には「通報しますた」とかいって、警察宛のメール文面を転送しまくって喜ぶ匿名の馬鹿まで出る始末。
 十時四十分あたりから「参加人数」が急激に減りはじめてるのは、そのせいだ。「いいかげんにしろ」「警察に任せろ」とか書いてきて、そのあとメールしなくなってるのが大勢。事態の収拾をめぐって〈マーチ〉と〈トウコ〉ってのが主導権争いをしてるらしい──ってとこまでは読み取れたけど、最後にccされてきたのは十一時ちょい過ぎ。今頃はどうなっておりますことやら。
(3)……自殺予告メールは二種類ある・・・・・・・・・・・・・
 つーか、「書きかけの遺書メール」が途中から「自殺予告メール」になってんだ。たぶん、この〈マーチ〉ってやつが書き加えたバージョン。
 つまり捜索隊だか何だかつくってまだ真面目にメールしあってるやつらは、全員、この〈マーチ〉バージョンをもとに「徳永が自殺予告してきた」「でも彼は誰かに止めてもらいたがってる」っていう間違った前提で行動してる。
 そんでもって、(4)。
 今朝九時ちょうど、徳永の身に、なんか予定外の事件があった。

 もうちょっと詳しく? じゃ、最初の「遺書」んとこからね。

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15×24(イチゴーニイヨン)link one せめて明日まで、と彼女は言った

新城カズマ

「なんで自殺しちゃいけないの?」とある大晦日、12月31日。高校2年生、徳永準の自殺予告メールがネットに流出しました。友人である笹浦耕は東京のどこかにいる彼を止めようと捜索隊を結成します。そこから始まる15人の24時間の物語。『おすす...もっと読む

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