パート3.せめて明日まで、と彼女は言った 在所 惟信[10:56]左右田正義[11:01]

自殺したがってる同い年の男子生徒のために割ける時間は……、三秒だね。なんでかって? しょうがねーでしょ。当人が死にたがってんだから――とある大晦日、12月31日。高校2年生、徳永準の自殺予告メールがネットに流出しました。友人である笹浦耕は東京のどこかにいる彼を止めようと捜索隊を結成します。そこから始まる15人の24時間の物語。『おすすめ文庫王国2009』でライトノベル部門の堂々1位を獲得した『15×24(イチゴーニイヨン)』シリーズを2巻まで連日更新。読みはじめたら止まれない、ライトノベル史上〈もっとも長い一日〉を味わってみてください。(イラスト:箸井地図)

在所 惟信 [10:56]

 そん時はマーチの肩ごしに、ちらっと見ただけだったんですけど。
 でも見つけた時にざっと見たんで、おぼえてますよ。こういうのは得意なんですけどね俺。どうも本番のテストになっちゃうと。あはは。
 地図は、新宿駅がだいたい真ん中んとこにあって、三色の蛍光ペンで輪が三つ描いてありまして。同心円、っていうにはちょっとデコボコしすぎかなあ。
 一つめの、いちばん小さい緑の輪は──北が新大久保から南は渋谷あたりまで、東西は四谷のちょっと先から中野坂上ぐらい。横んとこに『徒歩』って書いてあって。
 二つ目の輪は、ピンク色で、JRとか地下鉄の駅を結んでる。輪っていうか、なんか足の多すぎるヒトデみたいなかたち。南北はだいたい練馬から品川、東西は秋葉原から吉祥寺。山手線のひとまわりを、中心が皇居から新宿になるみたいに横へズラした感じ、っていえばいいのかな。こっちには『電車』って書いてて。
 三つ目の輪、黄色。同じ蛍光ペンで、新宿から放射状に出る幹線道路も塗ってあって。こっちはヒトデってよりも、自転車のタイヤのスポークとゴムみたいってのかな。靖国通り、青梅街道、山の手通り、それから早稲田通りもだ。文字は『車 タクシー バス』。ゴムもスポークも、ところどころ点線になったりフラフラゆれたりしてて。なんか決めきれないで迷ってるみたいに。
 それから──三重の輪の内側にある大きな公園、あと有名なビルとかが、赤い蛍光ペンで囲まれてた。二重丸とか、三重丸のもあった。たしか新宿御苑……井の頭公園……明治神宮と代々木公園……北の丸公園……青山墓地……サンシャイン60。
 あとは、余白のところの文字。極細の赤ペンで、
『新宿駅から三十分以内』『完璧な場所』『最良の方法』『31日 午前9時+1時間以内 午後には会える?遅くとも』。
 で、けっきょく徳永のやつ、何がしたかったわけ? うー、わからん! って俺が首をひねりながらノートとか調べてたら、
「……ははーん!」
 マーチが声をあげたんです。

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左右田正義 [11:01]

 ははーん、なるほどね。いやーおれって頭いいなあ。すぐわかっちゃうんだもん。

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15×24(イチゴーニイヨン)link one せめて明日まで、と彼女は言った

新城カズマ

「なんで自殺しちゃいけないの?」とある大晦日、12月31日。高校2年生、徳永準の自殺予告メールがネットに流出しました。友人である笹浦耕は東京のどこかにいる彼を止めようと捜索隊を結成します。そこから始まる15人の24時間の物語。『おすす...もっと読む

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