パート3.せめて明日まで、と彼女は言った 枯野透[10:37]

自殺したがってる同い年の男子生徒のために割ける時間は……、三秒だね。なんでかって? しょうがねーでしょ。当人が死にたがってんだから――とある大晦日、12月31日。高校2年生、徳永準の自殺予告メールがネットに流出しました。友人である笹浦耕は東京のどこかにいる彼を止めようと捜索隊を結成します。そこから始まる15人の24時間の物語。『おすすめ文庫王国2009』でライトノベル部門の堂々1位を獲得した『15×24(イチゴーニイヨン)』シリーズを2巻まで連日更新。読みはじめたら止まれない、ライトノベル史上〈もっとも長い一日〉を味わってみてください。(イラスト:箸井地図)

枯野透[10:37]

 選手交代して、僕は左右田にメール。
 でもさっきから返信がない。最後に来たメールには、有志を集めて〈捜索隊〉を結成中、みたいなことを言ってたけど……いったいあっちで何がおきてるんだ?
 ようやく効いてきたカフェインの援護射撃のもと、僕の思考はじわじわと匍匐ほふく前進を開始する。
 さっきメモった時に徳永の携帯に残っていたのは、ぜんぶ今日のメールばかり。どうやら彼は、受け取ったメールを几帳面に消去していく性格らしい。
 となると、あとは……そうか、徳永のほうから送信したメールだ。それから住所録か。そのへんに何か有用な情報があるかどうか。どっちにしても暗証番号がネックだ。四桁の数字の組み合わせ。あたまから順に打ち込んでいくしかないか?
 左右田にまたメール。やっぱり返事なし。うーむ。今朝からとびかってたccメールをさかのぼって、活発にやりとりしてそうな人にかたっぱしから返信してみる。こちら枯野と申します、徳永くんの携帯を発見しました、協力したいのですが左右田くんと連絡がとれません、どうなっているんでしょうか?──返事なし。
 しょうがない、こうなりゃ電話だ。
「あれ……」
「トオルさん?」
「電源切ってる。左右田のケータイ」と説明してるあいだに、僕の携帯が光り出した。やれやれ、やっと左右田から返信か? どうなってんだ、いったい。「……『警察に通報しますた』。なんだこれ?」
「メールですか? 左右田さんから?」
「違った。知らないメアドだ」
 スパム風のいいかげんなアドレス。匿名の誰かだ。
「イタズラ? ですか?」
「かなあ。この〈マーチ〉って、つまり僕の知り合いの左右田のことだけど、さっきまで彼があちこちに転送してたみたいで。その返事やら何やらが時々……だんだん減ってはきてるけど……だからたぶん、友達の友達に伝言ゲームみたいに広げてくうちに、なんか変なやつが紛れ込んできたんだ。きっと」
 続いてのメールも、そのまた次も、別の匿名だった。通報しますた、これは狂言自殺です、釣り乙、うざいからやめれ、そんな釣りに俺がクマー!、わたくしトクナガの母でございますこのたびは、等々。なにがなんだか。
 ──七通目、ようやくまともなのが来た。
「誰からですか?」
「toukoって人から」

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15×24(イチゴーニイヨン)link one せめて明日まで、と彼女は言った

新城カズマ

「なんで自殺しちゃいけないの?」とある大晦日、12月31日。高校2年生、徳永準の自殺予告メールがネットに流出しました。友人である笹浦耕は東京のどこかにいる彼を止めようと捜索隊を結成します。そこから始まる15人の24時間の物語。『おすす...もっと読む

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