パート3.せめて明日まで、と彼女は言った 枯野透[10:20]渡部亜希穂[10:23]

自殺したがってる同い年の男子生徒のために割ける時間は……、三秒だね。なんでかって? しょうがねーでしょ。当人が死にたがってんだから――とある大晦日、12月31日。高校2年生、徳永準の自殺予告メールがネットに流出しました。友人である笹浦耕は東京のどこかにいる彼を止めようと捜索隊を結成します。そこから始まる15人の24時間の物語。『おすすめ文庫王国2009』でライトノベル部門の堂々1位を獲得した『15×24(イチゴーニイヨン)』シリーズを2巻まで連日更新。読みはじめたら止まれない、ライトノベル史上〈もっとも長い一日〉を味わってみてください。(イラスト:箸井地図)

枯野透 [10:20]

「アキホちゃ……アキホさん?」
「トオルさん? ですよね? ああよかったあ! やっと会えたあ!」
 五分前、新宿に着いてケータイで会話した時までは小学生のお嬢ちゃんだったはずの彼女は、ド派手な化粧をした私服の女子高生(……なのか?)に変身するが早いか、全速力で駆け寄ってきて、ぼくの両手首をつかみ激しく上下に振りまわした。握手、のつもりなんだろうたぶん。
 神社の巫女みこさんが二人、社務所の中から、ぼくらを不思議そうな目で見てる。なんだか急に疲れと眠気がおしよせる。

「ごめん、どっか店に入っていいかな。喫茶店とか」
「はい、はいはい、もちろんです!」
「うん」僕は歩きながら徳永のケータイを受け取り、ちょっとだけ迷ってからメールを読む。思ったとおり、大量の『どうしたんだよ? だいじょうぶ?』メールがあちこちから届いてる。
 電話の着信記録のほうは……今日の分は、同級生のものらしきニックネームが並んでる。僕に連絡してきた左右田の名前は、見当たらなかった。そういえばあいつも、さっきからメールしてるのに返信がない。まさか左右田のほうでも何かあったのか?
 よく見ると、九時ちょっとすぎから四〇分あたりまで、名前の表示されてない着信はぜんぶ同じ番号だった。ということはつまり、徳永がこの相手の名前を入力してないってことで……知り合いじゃないのか、もしくは初めてかかってきた友人なのか。それにしてもどっかで見たような番号──あ。
「え!? ど、どうかしましたかトオルさん!?」
「あ、ごめん何でもない」
 なんだ。これ僕の番号じゃんか。僕は頭をふって、鼻から深呼吸した。
 もういちどメールボックスを開けてスクロール。こうしているうちにも、誰かからメールが届いた。
「アキホさん、これ、どこで見つけたの?」
「は、あの、そこの、いえ、あちらの道ばたに」
「徳永……」っていっても分からないか。「……これの持ち主は見なかった? 持ち主らしき人とか」
「い、いえ、ぜんぜん」
「このメール、どれかに返信してみた?」
「いいえ、まさか! その、他人様のケータイを勝手に見るなんてことは、わたくしそんな」
「…………」
 僕は他人様のケータイを開いたまま、これ以上勝手に着信記録を見てもよいものかどうか、考え込む。いや、彼女はそういう意味で言ったんじゃないとは思うけど。
「あ、あの、枯野さん」

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15×24(イチゴーニイヨン)link one せめて明日まで、と彼女は言った

新城カズマ

「なんで自殺しちゃいけないの?」とある大晦日、12月31日。高校2年生、徳永準の自殺予告メールがネットに流出しました。友人である笹浦耕は東京のどこかにいる彼を止めようと捜索隊を結成します。そこから始まる15人の24時間の物語。『おすす...もっと読む

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