​パート3.せめて明日まで、と彼女は言った 伊隅賢治[09:44]渡部亜希穂 [09:49]

自殺したがってる同い年の男子生徒のために割ける時間は……、三秒だね。なんでか? しょうがねーでしょ。当人が死にたがってんだから――とある大晦日、12月31日。高校2年生、徳永準の自殺予告メールがネットに流出しました。友人である笹浦耕は東京のどこかにいる彼を止めようと捜索隊を結成します。そこから始まる15人の24時間の物語。『おすすめ文庫王国2009』でライトノベル部門の堂々1位を獲得した『15×24(イチゴーニイヨン)』シリーズを2巻まで連日更新。読みはじめたら止まれない、ライトノベル史上〈もっとも長い一日〉を味わってみてください。(イラスト:箸井地図)

伊隅賢治 [09:44]

 男は信じられないくらい素早かった。武道の心得があるのか、それともやっぱり総合格闘技でもやっているのか。
「知ってんのか」
 奪われたケータイを鼻先に突きつけられる。
 喉が勝手に閉じる。思うように動かない。知ってるって、何を? 誰を? メールのことか。徳永を知ってるのかって?
 男が何か唸る。
「し──知ってる。知り合いだから──学校の……」
「居場所だ、アホ!」
「居場所……?」
 徳永が、今どこにいるのか。
 なんでこいつが、そんなことを知りたがってるんだ。というより、ついさっきまであいつはこのコンビニの中にいたんだ。それをこいつのせいで! ボクはすっかり混乱する。怒るべきなのか、それとも命乞いするべきなのか。いずれにしても当初の計画は、今やまったく役立たずの紙クズとして廃棄される運命だ。それだけは理解できた。
「案内しろ」
 もっていたナイフ(表面が黒いのは錆ではなくて血だ、間違いない──血の真の色は黒なんだ、赤ではなくて)を右の脇にはさんで、男の左手はボクの腕をつかむ。ものすごい握力、そしてひどく手慣れた動きだ。そうだ。この男はこうした動作に慣れているんだ。これまでに何人くらい殺してきたんだろう? 十人? 二十人?
「名前、何だ。あぁ?」
「い……伊隅」ケンジ、と最後まで言い終わる時間がなかった。
 ガラス張りの雑誌コーナーの外で制服の人影。男がふりむく。警官だ! 誰かが……そうか、レジ係が通報したんだ!
「伊隅!」
「え?」
「走るぞ!」

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15×24(イチゴーニイヨン)link one せめて明日まで、と彼女は言った

新城カズマ

「なんで自殺しちゃいけないの?」とある大晦日、12月31日。高校2年生、徳永準の自殺予告メールがネットに流出しました。友人である笹浦耕は東京のどこかにいる彼を止めようと捜索隊を結成します。そこから始まる15人の24時間の物語。『おすす...もっと読む

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