知られざる外資系金融の世界
真山 藤沢さんは大学時代までは日本にいらっしゃったんですよね。なぜ、アメリカへ渡ろうと思ったんですか? やはり、日本の考え方や雰囲気が肌に合わなかったということでしょうか。
藤沢 それも理由のひとつですね。僕は大学時代は普通にテニスサークルに入ったりしていたんです。それから4年生になって研究室に入りました。そこで、こうした大学のサークルだとか研究室の、どことなくジメッとした雰囲気というか同調圧力が僕には合わないと思って、これから研究を続けるなら海外のほうがやりやすいだろうと。他の仕事をするにしても、将来の選択肢も増えるだろうということで、留学したいと強く思っていました。やっぱり、日本のテニスサークルとかでとても居心地がいい思いをしていたら、海外へは行っていなかったと思います(笑)。
真山 では逆に、なぜ日本へ戻ってこようと思ったのでしょう。
藤沢 それはやっぱり経済合理性ですよね。日本というのはまだまだとても大きな経済で、外資系企業も多数進出しています。しかし、日本というのはやはり特殊なマーケットですから、英語だけできる外国人のエリートがポンと来てビジネスができるわけじゃない。だから、日本語も英語もできて、さらに一定水準以上のアカデミックのバックグラウンドを持っている人材だと、希少性があって、日本の外資系企業にとても高く売れるんですよ。だから、僕は日本人として、アメリカやイギリスでひとりの外国人として働くより、東京の外資系企業で働いたほうが、競争もぬるくて、報酬も高かったんですよ。
真山 もともと大学では何を専攻されていたんですか?
藤沢 物理です。応用物理学ですね。実験ではなくコンピュータ・シミュレーションの分野です。
真山 世間一般からすると、応用物理と金融はあまりリンクするイメージがないと思うんですが、藤沢さんのいた環境では自然な進路だったんですか?
藤沢 金融業界は、デリバティブなどの複雑な金融商品の開発やトレーディングの分野で、数学や物理やコンピュータ・サイエンスのPhDを多数雇っていましたから、物理のシミュレーションをやっていた僕にとってはとても自然な進路でしたね。そうした複雑な金融商品が今回の金融危機の一因になったわけですが(笑)。
cakesは定額読み放題のコンテンツ配信サイトです。簡単なお手続きで、サイト内のすべての記事を読むことができます。cakesには他にも以下のような記事があります。