第2回】欲を否定する日本人、欲を肯定するアメリカ人

経済小説『ハゲタカ』シリーズの最新作『グリード』発売を記念した、真山仁さんと藤沢数希さんの対談第2回。ずっと外資系金融で働いてきた藤沢さんにとって、金儲けの追求は何の疑いもなく「善」だとのこと。そうした考えを受け入れられるかどうかの境目、そして『ハゲタカ』が金儲けに走ることをよしとしない日本において支持されている理由はどこにあるのでしょうか? 2人の対話から見えてきたのは、「ハッキリものを言えない」日本人の国民性でした。同時掲載の『グリード』序曲とあわせてお楽しみください。(構成:友清哲)

“強欲”は経済活動に不可欠のもの

— アメリカの金融危機は、日本ではあまり危機感を持たれていないように感じます。

藤沢 アメリカのサブプライム危機は世界同時金融危機に発展し、100年に1度といわれているように歴史的な大事件だと思うんですけど、たしかに日本では、アメリカのリーマン・ブラザーズという会社が潰れて、株価が下がって日本も不景気になったという程度にしか認識されていないですよね。

真山 私もしばらく金融から離れたテーマで小説を執筆していたので、『グリード』を書く際にあらためてリーマンショックにさかのぼって調べ始めたのですが、知らない事実がたくさん出てきたし、今なおその余波は完全には収束していないことがわかりました。思っていた以上に深刻なので驚きました。

藤沢 でも「企業買収」などに比べると、こういう「金融危機」って、小説にしにくかったのではないですか? たとえば企業買収の場合は、買収する側がいて、買収される側の社長がいて、その下に従業員がいて—。そういった人間関係のなかで様々なドラマが描きやすいテーマだと思うんです。でも、金融危機ではなかなかそうもいかないですよね。

真山 危機というのは、物語をドラマティックにします。特に今回の場合、破滅が分かっているわけです。読者は、もうすぐ金融危機が起きるのを知っている。なのに登場人物達は右往左往するばかりで、どんどん逆スパイラルがかかり、身動きが取れなくなるわけですから、ハラハラします。その緊迫したムードの中に、架空の企業買収を織り込みました。それが相乗効果を生み、今まで以上の緊迫感を漂わせることができたのではと思っています。

— 藤沢さんも、近々小説の連載をケイクス上でスタートさせる予定があるそうですね。

藤沢 そうなんですけど、まずは金融とか経済などとは関係のないテーマで準備をしています。そもそも僕はマーケット部門にずっといて、基本的にパソコンの前で金融商品を売ったり買ったりしているだけなんですよ。パソコンの画面の中には人間ドラマはないですから、なかなか物語にはしにくいんです。

真山 なるほど(笑)。でも、どんな小説ができあがるのか、楽しみです。

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日本人に足りないのは「強欲」なのか?—真山仁×藤沢数希対談

真山仁 /藤沢数希

金儲けをしたいという欲望を持つのは悪いことなのか? 日本社会の論理にとらわれずに大企業に買収をしかけていく企業買収者・鷲津政彦の活躍を描きながら、そんな問いを投げかけ続ける経済小説が「ハゲタカ」シリーズです。シリーズ最新作『グリード』...もっと読む

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