さとり世代

第4回】さとり世代をつくった情報環境

ブランド物やクルマに興味がなく、恋愛にも消極的。そこそこの生活で満足――。20歳前後の若者の消費傾向を指す言葉として、「さとり世代」という造語が着目を浴び、流行語大賞にもノミネートされました。そんな若者の本音を探るべく、原田曜平さんと約60人の大学生が「いまどきの若者」について語り合った議論をまとめたのが『さとり世代』。本連載では、本書の議論の一部を抜粋し、若者たちのホンネをご紹介します。

格差とソーシャルメディアによって世の中が優しくなった

早稲田大・4年・男 さとり世代って、格差によって生まれたのかなと思います。ブランド物に興味がない人ももちろん増えていますが、欲しい人も中にはけっこういると思います。昔のことはよくわからないですけど、昔は皆がとにかくブランド物を欲しがったり、頑張れば皆買えた、っていう状況もあったように思う。でも今は、格差が生まれて、私はここらへんでいいやとか、ブランド物は買わなくていいや、買えないわと考えるようになった人も増えた。所属するコミュニティによっては、人の目も気にしなくちゃいけなくなっているし。

原田 格差が生まれたから、自分はブランド物と関係ない社会階層だ、って思う若者が増えた、と。で、そうした社会階層の友達がいるコミュニティでは、ブランド物を見せびらかしたりできない、だから買わないと。

早稲田大・4年・男 さとり世代って、空気を読む世代だと思います。ソーシャルメディアでいろいろな人とつながり、いろいろなコミュニティを持っているので、コミュニティごとに合わせて空気を読まなくてはいけない。それが消費にも表れているんじゃないかと。

慶應大・2年・女 私は、「さとり世代」って、カメレオン世代だと思います。友達やコミュニティによって、自分のキャラクターや持ち物をちょっと変えてみたり。例えばブランド物をすごく持っている友達がいたら、自分もすごくオシャレを頑張ったりするし、逆に気楽な地元の友達の前では、あんまりそういうブランド物を持たないようにしたり。

原田 ソーシャルメディアを介して友達もコミュニティも多くなっているし、格差もあるから、さとり世代は空気を読むようになってきている、と。

慶應大・2年・女 やっかみをあんまり買いたくないというか。どこのコミュニティでもいい顔をしていたいというか。

原田 あまり出過ぎないとか、コミュニティに合わせようとかっていう、君たちのちょっと控え目な行動が、さとっているように見られるんだろうし、「ブランド離れ」に見られるように、君たちの消費性向にも影響しているのかもしれないね。

慶應大・2年・女 周りに合わせるっていうのは、個人を尊重するようになっているという意味もあると思います。例えば、大人数の飲み会のときも、「まずはビール」という強制がなく、カクテルやサワーを飲んでもいいし、イッキなんかさせないで、みんなで会話を楽しむほうを選ぶとか。個人を尊重する世代なのかなと思って。

原田 オールラウンドサークルなんかで、激しい飲み方をするサークルもまだあるけど、基本的にさとり世代は優しくなっているよね。飲み会での強制も減っているし、そもそも社会的押し付けが減っている中で生きてきたので、「こうじゃなきゃいけないからこうしろ」という相手への押し付けが少なくなってきているね。これも根底には格差やソーシャルメディアが影響しているのかもしれないね。でも、かつてはこうしたある種の社会的プレッシャーが、消費や行動の一つの原動力になっていたよね。例えば、「まずはビール」があったから、ビールの味が嫌いな人でも、最初の一杯目はビールを飲んでいたわけだし、そうしているうちにいつの間にかビールが好きになっていった人もいた。「25歳を過ぎた女性は25日を過ぎたクリスマスケーキと同じ」と言われていたから、嫌々だった人もいただろうけど、とりあえず、結婚した人が多かった。社会から強制や強要が減って、個人の自由が尊重されるというのは、基本的には良いことだと思うけど、かつてあった消費や社会的慣習が減ってしまうわけで、この点について皆はどう思う?

早稲田大・3年・男 世の中が優しく、自由になり過ぎたから、全て自分たちで選択しなくてはいけなくなった。実は無思考で、選択しなくて良かった時代のほうが楽だった気がする。

中央大・3年・男 無根拠に信じられるものがあった時代のほうが良かった気がする。自由は本当に大変。でも、あまりに皆が右へ倣えも気持ちが悪いけど。

原田 さとり世代は、既に自由な時代を生きてきたから、むしろ「不自由さ」を求めているのかもしれないね。確かに、経験値のない若い時代に、「好きにしていいよ」って言われても、自信を持って選択できる人は、一部の優秀な人に限られるもんね。さとり世代は、かつての自由を求めた若者とは違い、揺り戻しのステージにいて、ある程度、社会や大人から強制されたいんだね。

情報通で冷めた世代
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さとり世代

原田曜平

ブランド物やクルマに興味がなく、恋愛にも消極的。そこそこの生活で満足――。20歳前後の若者の消費傾向を指す言葉として、「さとり世代」という造語が着目を浴びています。そんな若者の本音を探るべく、若者を対象とする博報堂の原田曜平さんと約6...もっと読む

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