データを壊すためにデータが必要—中西哲生×西内啓 対談2

11月の欧州遠征では素晴らしい活躍をみせた日本代表。来年のブラジルW杯に向けて、さらに期待が高まります。日本時間の12月7日午前1時には組み合わせ抽選会が控えます。そんな最中、『日本代表がW杯で優勝する日』(朝日新書)の著者である、スポーツジャーナリスト・中西哲生さんと、cakesの連載『統計学が最強の学問である』でお馴染みの、統計学者・西内啓さんの熱いサッカー対談が実現しました。どうすれば日本代表は、W杯で優勝できるのか? 第2回は、チームの強みをデータ分析されるとどのような事態になるのか、NBAの事例を出しながら戦略論を提示します。

サッカーには統計学が必要

中西 僕は、西内さんがサッカーの本を出されてるということを全く知らずに、自分の勉強として『統計学が最強の学問である』を読んでました。その後、『遠藤保仁がいればチームの勝ち点は117%になる』を読んでとても驚きました。統計学をサッカーに持ち込んで、こういう本を書かれているんだ、と。


西内 ありがとうございます。

中西 僕は、いつか監督になりたいと思っているんですが、その時のために絶対この人はチームに入ってほしい人の名刺を10枚くらい持ってるんです。西内さんはそのうちのお1人です。

西内 おお、それはうれしいです。

中西 僕自身、データをとても大事にしていて、サッカーには統計学の専門家が絶対必要だと思っています。たとえば、ワールドカップで、日本代表が先制点取られた試合は1分5敗、つまり勝ててないっていうデータがあるんです。そのデータを見たら、先制点は取られちゃまずい、とすぐわかる。もちろん、データはいつか壊されるってことも分かってなきゃいけなくて、先制されてもワールドカップで勝てるチームになる可能性だって十分あります。けど、我々がデータによって予測できることは確実にあると思っています。


西内 ええ、まさにその通りだと。

中西 これから日本の目指すべきところは、データを重視しながら成長していった上で、データを壊していくことなんです。そのために、どう統計と付き合っていくか、そして、どう壊していくかということが重要です。だからサッカーにも統計学にも精通した人が必要なんです。

西内 なかなか、世界にもいない気が(笑)。

中西 戦術的なメリット以外にも、データを知ることで、監督が指摘するポイントの精度も上がるし、そうすれば自然と選手のレベルも上がるというメリットがある。さらに、観客の我々もより深いところを見ていければ、プレーに対する要求が厳しくなって、応援するチームがより強くなる。そうやって、選手、監督、そして観客が一体になってワールドカップ優勝に向かうことが大切なんです。

— 来年のワールドカップについて、ぜひ予想をお聞かせいただけないでしょうか?

西内 最近の日本代表の調子を見ると、予選リーグは突破できるかなと思いますが、それも抽選がどうなるかだと思います。

中西 組み合わせをシミュレーションすると、「ブラジル・イタリア・フランス・日本」なんて可能性もあるんですよ。

西内 その組み合わせは最悪のパターンですね(笑)。

中西 ワールドカップで最も優勝しているブラジル、それに次いで優勝が多いイタリア、主要な大会(※8)を唯一制覇しているフランスっていう、予選リーグ突破がものすごく難しい組み合わせです。

※8ワールドカップ、コンフェデレーションズカップ、オリンピック、欧州選手権

西内 抽選はさておき、一緒になったら嫌だなと思うのはどのチームですか?

中西 ブラジルとスペイン、ドイツ、アルゼンチンはかなり嫌ですね。あと、オランダ、イタリア、イングランド、フランスも一緒になりたくない。日本が苦手な南米勢のチリ、エクアドル、それに日本と同じプレースタイルのメキシコも苦手です。

西内 11チームですか。けっこう多いですね……。

中西 ただ、厳しい中でも日本は上を目指していかなきゃいけません。どうにかして決勝トーナメントにいって、1回でも勝つ。決勝トーナメントではまだ勝ったことないので、なんとしても、そのサンプルケースを増やしたいところです。

西内 そうですよね。本当の強豪とガチでやるってことは意外とないですもんね。すごい貴重なケースになると思います。



中西 そういった相手とやれるのは、もうワールドカップしかないですから(笑)。

西内 ええ。

中西 この間のベルギー戦では少なくとも、比較的ガチに近い状況でしたよね。ベルギーは前の試合でコロンビアに負けていて、勝ちを欲していた。しかもホームゲームで観客も多く、真剣になる要素はそろっていました。
 ただ、オランダの試合は逆で、ホームじゃなくて空席が目立つ、相手が格下の日本ということで、オランダはかなりテンションが低かったと思います。日本の選手たちも、勝つチャンスは十分にあるという気持ちで戦ってたんですが、結局2点先に取られてしまいました。ただ、追いついたっていうのは価値があると思います。いくら本調子じゃないオランダといっても、オランダはオランダなんで。そういうことはプラスにとらえたほうがいいと思いますね。

最高と最悪の組み合わせの確率

— 抽選については、西内さんはどのようにご覧になるんですか?

西内 組み合わせの確率は計算しますね。本当にもう、高校の数学に習うようなやつですけど。
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日本代表がW杯で優勝する日—列強に打ち勝つための提言

中西哲生

私たちは死ぬまでに日本代表がワールドカップトロフィーを掲げる光景を目の当たりにできるのか? その問いに確信を持ってイエスと答えるのが、テレビ朝日系「Get sports」などで論理的なサッカー解説でおなじみのスポーツジャーナリスト・中...もっと読む

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コメント

muramura_yfm 「サッカーにも統計学を」なんて言ったら賛否分かれるだろうし、それだけのサッカーなんてボクも嫌だけど、今や日本みたいなチームが勝つため強くなるためには必要な時代なのかも。→ 4年以上前 replyretweetfavorite