深夜、知らない番号からの着信。恐る恐る「もしもし?」と言うと電話口から「ジョンさんですか? ブロス見ました」と女性の声。
彼女の名前は菊地さん(25歳)。キクボルタと呼ばせてもらうことにした。僕は誌面に書いた約束通り、中国の話やレストラン開業計画など、福建省・平潭島に関する取材で得た様々なことをひと通り話した。30分ほど話しただろう。そして、僕は彼女に質問した。
「どこに住んでるんですか?」
「熊本です。3.11の震災で逃げたんです。熊本に」
僕は自分の話よりも、彼女の話のほうが気になって仕方なかった。その日、キクボルタさんは「東京に行く機会があれば、お会いしたいです」と言っていた。翌週の日曜夜、突然携帯が鳴った。
「東京に行くので会えませんか?」
キクボルタからの電話だった。大好きなバンドのライブが下北沢であるらしい。というわけで、急な話だが、翌日月曜の夜に会うことになった。
待ち合わせ場所にいたのは、大人しそうな女性。顔は光浦靖子さん似。小さなリュックを背負って、ビニール袋を手に持ち、水木しげるの妖怪柄のワンピースを着た今時の女性である。
読者ブロファイル① キクボルタ:本名、菊地さん。25歳。熊本在住。愛読書はブロスとコミックビーム。ビニール袋のは靴(予備?)などが入っていた気がする。妖怪柄のワンピース。2泊3日とは思えない小さなリュック。スニーカー。メガネ。
失礼ながら直感的に「こんな変な人はなかなかいない」と思った僕は、矢継ぎ早に質問をした。
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