フットボールインテリジェンスの磨き方—中西哲生×西内啓 対談1

11月の欧州遠征では素晴らしい活躍をみせた日本代表。来年のブラジルW杯に向けて、さらに期待が高まります。日本時間の12月7日午前1時には組み合わせ抽選会が控えます。そんな最中、『日本代表がW杯で優勝する日』(朝日新書)の著者である、スポーツジャーナリスト・中西哲生さんと、cakesの連載『統計学が最強の学問である』でお馴染みの、統計学者・西内啓さんの熱いサッカー対談が実現しました。どうすれば日本代表は、W杯で優勝できるのか? 全4回中、初回と第2回は連日更新でお届けします!

サッカーのディティールを知ろう

— 最近行われたサッカー日本代表の試合、11/16のオランダ戦は2-2で引き分け、11/20のベルギー戦は3-2で逆転勝利という成績でしたが、この状況はいかがでしょうか?

中西哲生(以下、中西) そのおかげで、FIFAランク上位のチームにもひるむ必要はないんだとわかりました。

西内啓(以下、西内) はい。見る側のモチベーションもあがってると思います。



中西 『日本代表がW杯で優勝する日』の内容にも説得力が出たかもしれませんね(笑)。

日本代表がW 杯で優勝する日 (朝日新書)

『日本代表がW 杯で優勝する日』(朝日新書)

西内 僕の場合、『遠藤保仁がいればチームの勝ち点は117%になる』という本を出した次のシーズンに、遠藤が所属するガンバ大阪が調子悪かったので、説得力が……(笑)。

遠藤保仁がいればチームの勝ち点は117%になる データが見せるサッカーの新しい魅力 (ソフトバンク新書)
『遠藤保仁がいればチームの勝ち点は117%になる』(ソフトバンク新書)

中西 いやいや。ただ、この間の日本代表の試合も後半から遠藤選手が出てきて、素晴らしいプレーで流れを変えたと思います。

西内 よかったです。近年は、日本人全体のサッカーを見る目も肥えてきている気がしています。

中西 そう思います!

西内 少なくともこの世には3バックと4バックがあるんだ、とか(笑)。それに加えて、ラインというものがコントロールされてるんだとか。

中西 昔は皆さん、知らないことが多かったと思います。

西内 だんだん戦術的なことにも目が向けられるようになった気がします。ただ、中西さんの本を読んで、普段気にせずにいたところにも、もっといろんな見どころがあるんだということに気がつきました。

中西 ありがとうございます! 具体的には、どんなところですか?

西内 同じパスでも直線的なパスなのかカーブするパスなのかとか、フォームのディティールひとつとっても、実はもっと見るところがあるんだとか。トラップをする時に軸足を浮かして受けるとピタリと止まるっていうのを知ってから、試合見るたびに気にして見ちゃってます。

中西 いやー、軸足浮かすと本当にピタッと止まるんですよ! もう8年くらい前ですけど、最初に気づいた時はガッツポーズしましたもん、僕(笑)。



西内 そうすればね、強めのパスが出せますもんね。そういったディティールに気づくと、データの取り方も変わってくるんですよね。日本では、サッカーのデータを取っているデータスタジアムっていう会社がありますけど、そのデータの分類の仕方には、当然やっぱり粒度があって。同じ「パスをしました」なのか、それを何かしらの基準でショートパスとロングパスに分けるのかとか。

中西 アンダープレッシャーかノープレッシャーか、ということもありますよね。

西内 はい。そういうふうに、データはもっといくらでも分けられるんだなって気づきました。そういった細かいデータが集まれば、さらに分析が深まって、戦術の幅も広がる気がします。

中西 実際かなり広がりますね。

「日本代表は優勝する」と意識することがなにより大事

— 中西さんの本で、「ここがポイント!」というところはありますか?

中西 この本が出ること自体がポイントです。この題名の本が書店に並ぶ、ということが重要なんです。

西内 なるほど。

中西 『日本代表がW杯で優勝する日』というのを目にして、みんなが「あ、いつか優勝する日が来るんだ!」と意識してくれたらいいなと思ってます。よく、紙に目標を書いて貼っておくといいって言うじゃないですか。

西内 この本が、紙の代わりに全国に貼りだされるみたいな。

中西 そうです。みんなが「日本代表は優勝する」と意識することが何より大事です。目指せベスト4とか言ってると、絶対優勝できません。これだけ科学がスポーツに関与してくると、フロック(まぐれ)で「勝ってしまった」はほとんどあり得ない。「優勝するんだ」という明確な意識を持っていることで、どんなプレッシャーの中でも力を発揮し、優勝を勝ち取れるんだと思います。

西内 その意識を持たせるのが、この本なんですね。

中西 はい。本の内容の入り口はすごく敷居を低くしてます。奥は底なし沼みたいになってますが(笑)。

西内 それは感じました(笑)。

中西 サッカー選手が読んでも発見があると思います。長友佑都選手(※1)でも知らないことがありましたからね。これを読んで代表の試合見たら、間違いなく見る視点は変わります。
※1 長友佑都(ながとも・ゆうと)。イタリアのセリエA・インテルに所属。豊富な運動量と抜群のスピードで、同チームでも確固たる地位を築いている

西内 この本に書かれている知識はどうやって習得したんですか?

中西 参考にさせていただいたのは、ベンゲル(※2)とストイコビッチ(※3)という、フットボールインテリジェンスの塊みたいな2人と、遠藤保仁選手(※4)と中村俊輔選手(※5)という、選手として日本でフットボールインテリジェンスがもっとも高いであろう2人。彼らにこの10年間インタビューさせていただきました。
※2 アーセン・ベンゲル:1995-1996年に名古屋グランパスの監督を務め、現在はイングランド・プレミアリーグのアーセナルFC監督を務める
※3 ドラガン・ストイコビッチ:ヨーロッパで活躍した後、1994-2001に名古屋グランパスに所属。現在は同チームの監督を務める
※4 遠藤保仁(えんどう・やすひと):Jリーグのガンバ大阪所属。10年連続でJリーグベストイレブンに選ばれ、日本代表でも中心的な役割を担っている
※5 中村俊輔(なかむら・しゅんすけ):Jリーグの横浜F・マリノス所属。2005-2008年、スコットランドのセルティックに所属し、3連覇を果たしている

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日本代表がW杯で優勝する日—列強に打ち勝つための提言

中西哲生

私たちは死ぬまでに日本代表がワールドカップトロフィーを掲げる光景を目の当たりにできるのか? その問いに確信を持ってイエスと答えるのが、テレビ朝日系「Get sports」などで論理的なサッカー解説でおなじみのスポーツジャーナリスト・中...もっと読む

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コメント

thunder0512 「」これは面白そう。中西さんの本も買ってみようかしら! https://t.co/tPv8PMxgPL 5年弱前 replyretweetfavorite