今年8月頃から、タイのインラック政権に対する反政府運動が活発化し、11月にはバンコク中心部の主要官庁がデモ隊に占拠されるという異常事態が続いています。
日本人を含む海外先進国の人間からは、このタイの内紛はまことに奇妙で理解しがたいものに見えます。
というのも、反政府デモを行っているPAD(民主市民連合)とそれを組織している野党・タイ民主党のステープ元前副首相は、両方とも組織名に「民主」という文字が付いているにもかかわらず、民主的選挙によって選ばれたインラック政権の退陣と、選挙によらない代表者による「国民会議」の創設とを求めているからです。
1日には、インラック首相がPADの代表とステープ氏と会談したものの、議論はかみ合わず物別れに。PADは首相退陣までデモを止めない姿勢を見せ、一方のインラック首相も議会の解散や退陣といった要求は拒否しています。首都バンコクの政治・経済機能は次第にマヒしつつあるにもかかわらず、事態の打開は見通せていません。
そもそもなぜこの両者はいがみ合っているのでしょうか? 今回は、外国人には理解しづらいタイの政治構造を考察しながら、民主主義の政治が成り立つ前提について、タイから学べる教訓を考えてみたいと思います。
意外に多い?日本とタイの政治・文化の共通点
タイは政治的にだけでなく、歴史的・民族的にも日本と共通点の多い国です。いくつか思いつくところを挙げると、
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