ネットが普及して、マーケティングは難しくなった
加藤貞顕(以下、加藤) 川上さんに、マーケティングのお話も聞いてみたいですね。かつて書籍は、新聞に広告を大きく出して、書店にたくさん並べれば売れました。でも、だんだんその手法では売れなくなりました。僕自身は2008年くらいから、コンテンツのマーケティングの潮目が変わってきたなと感じているんです。
みんなの興味が細分化して、マス広告が効かなくなってきたのが、そのくらいからではないかと。そして、ネット上のコンテンツのマーケティングはさらに難しくなっている。だから、ケイクスでは著者自身で告知ができるなど、新しいマーケティングの仕組みを模索しています。
川上量生(以下、川上) 正しいと思います。AmazonにせよAppStoreにせよ、一番の欠点は、作者が作品を買ってくれたユーザーに対して、継続してマーケティングする手段がないってことなんですよね。ユーザーをどう囲い込めるか、ファンクラブをつくれるかというのがコンテンツのマーケティングにはすごく重要。だから、それができないAmazonやAppleのシステムは、クリエイターにとって天国にはなり得ないでしょう。
加藤 そう考えると、ドワンゴの「ブロマガ」はファンクラブみたいなものですよね。
川上 それを意識してつくっています。ユーザーになにかを提供して、お金を払ってもらう仕組みがあれば、ずっと固定ファンになってくれますからね。そのファンが、ものづくりやビジネスのベースになるんです。
加藤 ファンクラブがあれば、マーケティングもそこでできる、と。ブロマガの開設は今まで著名人に限定していましたが、今度、一般ユーザーさんにも開放するんですよね?
川上 はい、もともとそのつもりだったので。
加藤 なぜ、最初から開放しないで、あとから足すようにしたんですか?
川上 そうしないと、ユーザーさんが怒るからです。
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