インターネットが、巨大な人材プラットフォームになる
加藤 ドワンゴでは、2012年にメルマガサービス「ブロマガ」を始めましたよね。どうしてこのタイミングで有料メルマガを始められたんですか?
川上 数年前から堀江貴文さんや津田大介さんからは、有料メルマガをやってほしいと言われてたんですけど、興味がもてなかったんです。ビジネスサイズとして小さいですしね。それとは別に、僕は僕でネットで発信する人にお金が儲かる仕組みができたらいいなと考えていました。
加藤 それは、ニコニコ動画の流れで考えていたんですか?
川上 はい。いまニコニコを始めとして、ネット発の有名人ってけっこう出てきているなと思って。それはどういうことなんだろう、と考えていたんです。そして、つまりこれは、巨大なジャニーズ、AKB、吉本興業みたいな構造ができあがっているんじゃないかと気づきました。
加藤 ネットが、巨大なプロダクションみたいなものになっていると。
川上 例えば、吉本興業と契約している芸人さんは数千人いますが、芸で稼いで食えているのはおそらく200人くらい。AKBのプロジェクトは全部で何人いるんだろう……まあ、300~400人いるのかな。要するに、日本の芸能界の主要な位置にいる事務所でも、数百人の前半くらいが食えるというのがプロの世界です。だとすると、アマチュアの世界において、ニコ動で1000人食えるようになったら、クリエイターを輩出する、巨大なプラットフォームになるだろうなと考えました。
加藤 うーん、なるほど。
川上 中身はともかく、1000人食えてるっていうのが重要なんです。数というのはどこかで力になりますからね。1000人、2000人と増えていったら、ネットから出てくる人たちのほうが強くなる。ニコ動で食える人を1000人つくろうとしたとき、有料メルマガはその柱になる。だから、ブロマガを始めたんです。
加藤 そんな構想で始められたんですか。
川上 これは、公で初めて言ったことかもしれません。
加藤 なるほど、それで、ニコニコのサービスを活かして、文章だけでなく生放送などの配信もできるようにしたんですね。始めてからたった1年で、有料登録者が10万人を突破したと聞きました。それはめちゃくちゃすごいことですよね。
川上 ありがとうございます。いま10万件の登録者が払っている平均単価が550円くらいなんですよ。そうすると1000人会員がいれば、月55万円入ってくる。手取りで三十数万円の収入が毎月入ってくるわけですよね。だいたい1000人集められれば、その人はもう食えるわけです。で、いまブロマガで有料会員千人以上の人って、30人くらいいるんですよ。
加藤 そんなにいるんですか!
川上 しかも、僕らが2011年に開始した「クリエイター奨励プログラム」というのもあって、それも含めて計算すると、ニコ動からの収入だけで食えている人はもう100人超えてるはずなんです。
加藤 「クリエイター奨励プログラム」って、どういうサービスなんですか?
川上 ニコニコの投稿作品に対し、プレミアム会員からの会費の一部を原資にして、奨励金を払うんです。それは再生数とかマイリストに入れられた数とか、いろんな要素を入れた式から金額を出してるんですけど。
加藤 要するに、たくさん作品が視聴されるとお金が入ってくるんですね。
川上 そうです、そうです。
加藤 それで暮らしている人もいるんですか?
川上 暮らせる金額は払ってますね。数千万単位でもらっている人もいるし、チームで作品をつくって分配している人もいます。ニコ動からの直接収入で100人以上食える人が出ていて、実際にはそれ以上にコミックマーケットなどの同人イベントで稼いでいる人がいると思います。
加藤 ニコニコをマーケティングの場として使って有名になった人が、コミケで作品を販売すると。
川上 それも含めると、ニコ動の周辺でおそらく500人くらいは食えるクリエイターが出てきている。それを1000人、2000人と広げていきたいんです。
コンテンツに金を払わないのは親のしつけの問題
加藤 ブロマガとケイクスって、同じくらいのタイミングで始まったんですよね。2012年の8月にブロマガが始まって、ケイクスは翌月オープン。ブロマガが始まった当初は、正直「まいったなー」と思いました(笑)。
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