川島が抱える問題点と、西川の魅力
前回のサイドバック論争に続き、今回クローズアップするのはGKだ。
セルビア&ベラルーシ戦後の居酒屋サッカー論で、僕はザックジャパンが停滞する理由の一つとして、GK川島永嗣が抱える問題点をこんなふうに書いた。
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(第24回より)
川島のところに来たボールの多くは、相手にプレゼントしてしまうことが多い。これをザックジャパン停滞の5つ目のポイントに挙げたい。
ボールを持ったとき、形としては川島、今野、吉田が三角形になっているのだが、そこでパスをうまく回すことは少ない。これはセルビア、ベラルーシ戦に限った話ではない。ずっと前から顕在していたが、やはり日本代表に対して、この問題を大きくするほど良質なプレスを高い位置からかけてくるチーム自体が少なかった。
しかし、相手が強くなればなるほど、戦術的に優れるチームになればなるほど、ザックジャパンの良さを出す上で、川島がビルドアップの起点になれないのは弱点と言わざるを得ない。リスクを避けて蹴り出しているので、あまり言及はされないが、このようなボールの捨て方は、ジワジワと自らに対するボディーブローのように効いてくる。
西川周作は主張をするチャンスかもしれない。が、GKとしてもっとも大切な気迫、存在感という意味において、やはり川島は魅力的なので難しいところだ。
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セルビア戦とベラルーシ戦が無得点に終わったのは、攻撃の組み立てが川島を経由するたびに川島で終わってしまい、ディフェンス機会を無駄に増やされてしまうところにも要因があった。そして今回、オランダ戦のスタメン用紙を記者室で受け取ったとき、僕は「うおっ!」と唸った。大迫勇也のところでもなく、山口螢のところでもなく、GKが西川周作であったことに。
パフォーマンスは予想通りだった。西川はうまい。サポートした今野泰幸や吉田麻也にリズムを失わずにつなぎ、距離の長いロングパスやミドルパスも正確に前線に届けた。おそらく川島のプレーならば「クリア」と呼んでしまうような状況のボールでも、西川の場合は「パス」と呼ぶことができた。
その後のベルギー戦で先発した川島も、西川のプレーが影響したのか、以前よりはシンプルにテンポを失わずにつなぐことに意識があったようだ。とはいえ、やはりクオリティーは西川にはかなわない。足元がうまい、うまいと言われるバルセロナのGKビクトル・バルデスでさえ、左足側に追い込まれると困るところもあったが、西川は左右両足でそん色なく蹴り分けることができる。
フィールドプレーヤーの目線で言えば、明らかにビルドアップに関しては西川のほうが優れている。それは間違いない。
では、この川島と西川について、ビルドアップだけではなく、GKとしてのセービングなどを総合的に含めた評価はどうなるのか?
※ビルドアップ ゴールキーパー、ディフェンダー、守備的ミッドフィールダーなど、後方の選手からの攻撃の組み立て。
今回は僕がライターを務めた『サッカー守備 DF&GK練習メニュー100』(池田書店刊)について、GK部門を監修していただいた足立高浩さんに、両者についての意見を聞いてみた。
足立さんは過去にアーセン・ベンゲルの元でGKコーチを務めた経験もあり、現在は静岡県を中心にGKコーチとして活動している。その指導理論は、書籍を通して、かなり僕も勉強させていただいた。
専門家に聞く! 西川の失点について
その足立さんがどのように川島と西川を見ているのか。まずはオランダ戦で喫した2失点について、西川のプレー分析を聞いてみよう。
ストロートマンのミドルパスに対し、内田篤人が処理に戸惑い、頭でバックパスをしたボールが短くなってファン・デル・ファールトに拾われた場面。ここでGK西川は飛び出して行ったが、ファン・デル・ファールトに軽くボールを浮かされてゴールに沈められてしまった。この西川のプレーをどう評価するのか?
足立 「結局、手先だけで突っ込んでしまいましたが、飛び込むのではなく、壁を作るブロッキングで対応すれば防げた可能性もあったと思います」
これは前述の書籍を作っているときに、何度もお聞きした話だ。結局のところ、人間の体は完璧な面ではないので、このような球際に対して飛び込んで行くと、股の下、脇の下などをスルスルと抜かれる可能性が高い。この場面の西川のように、手先を突き出してボールを探るとそうやってボールが抜けてしまう可能性が高い。そこで脇を締めて構え、GKの姿勢が『壁』になるようにしてブロッキングを行うべき。その点についての指摘があった。
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