作家は、ネタで勝負しなくてもいい
——この本のなかでは、新規性のあるネタ探しについての方法論が書かれていますが、石井さんはネタ探しをどのようにやっているんですか?
石井 ネタを探すというより、視点をしっかりと持つ方が重要だと思います。それは、僕が「作家」だからなのでしょう。作家の場合は独自の視点や感性や表現方法を持っているか否かが重要です。それをしっかりと持ってさえいれば、どんなテーマを書いてもその人の作品になるんです。もちろん、その上である程度ネタをしっかりつかむことは必要ですけど、完全なネタ勝負ではないのであまり奇をてらう必要はありません。
一方、作家でない場合は、ネタで勝負する割合が高くなります。たとえば、作家ではない新聞記者が死刑について書けば、大体同じような記事になります。だからこそ、彼らはテーマで書くのではなく、ネタで勝負しなければならない。そういうことなんだと思います。
高橋 たしかにそういう側面はありますよね。テレビにも近いものがあるかもしれません。
石井 いずれにせよ、ネタを探しまくっていると、いつの間にかかなりきわどいネタになってしまうことがあります。サブカル的なものになりかねないことがある。これは危険です。
ただ、作り手にとって一番重要なのは「品」です。この「品」があれば、サブカル的なネタだとしても文学になりえる。谷崎潤一郎なんかがその最たるものですよね。
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