後編】ノンフィクションか? フィクションか?

ノンフィクション作家の石井光太さんとテレビ東京ディレクターの高橋弘樹さんとの対談です。これまでノンフィクションを中心に活動されてきた石井さんですが、新刊『蛍の森』は「小説」として刊行されます。綿密な取材に基づく内容を、なぜノンフィクションではなくフィクションとして発表しようと考えたのでしょうか? その理由には、物事を伝えるうえでの両者の性質の違いがありました。高橋さんの連載「人と同じじゃつまらない――TVディレクターの演出術」とあわせてご覧ください。

作家は、ネタで勝負しなくてもいい

—この本のなかでは、新規性のあるネタ探しについての方法論が書かれていますが、石井さんはネタ探しをどのようにやっているんですか?

石井 ネタを探すというより、視点をしっかりと持つ方が重要だと思います。それは、僕が「作家」だからなのでしょう。作家の場合は独自の視点や感性や表現方法を持っているか否かが重要です。それをしっかりと持ってさえいれば、どんなテーマを書いてもその人の作品になるんです。もちろん、その上である程度ネタをしっかりつかむことは必要ですけど、完全なネタ勝負ではないのであまり奇をてらう必要はありません。
 一方、作家でない場合は、ネタで勝負する割合が高くなります。たとえば、作家ではない新聞記者が死刑について書けば、大体同じような記事になります。だからこそ、彼らはテーマで書くのではなく、ネタで勝負しなければならない。そういうことなんだと思います。

高橋 たしかにそういう側面はありますよね。テレビにも近いものがあるかもしれません。

石井 いずれにせよ、ネタを探しまくっていると、いつの間にかかなりきわどいネタになってしまうことがあります。サブカル的なものになりかねないことがある。これは危険です。
 ただ、作り手にとって一番重要なのは「品」です。この「品」があれば、サブカル的なネタだとしても文学になりえる。谷崎潤一郎なんかがその最たるものですよね。

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ノンフィクションのちから—石井光太×高橋弘樹対談

石井光太 /高橋弘樹

テレビ東京ディレクター兼プロデューサーの高橋弘樹さんが、ちくま新書より『TVディレクターの演出術――物事の魅力を引き出す方法』を刊行されました。それを記念して、「世界ナゼそこに?日本人」の取材で海外を飛び回る高橋さんと、海外ルポで高い...もっと読む

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コメント

gogo_yukky 佐野眞一臭がするのよね、この人も。小説で正解。 5年弱前 replyretweetfavorite