ムツゴロウの青春記(畑正憲)

finalventさんの『新しい「古典」を読む』、第7回は畑正憲著『ムツゴロウの青春期』。今でこそ「動物王国」のイメージが強いですが、元々は作家・エッセイストとして知られていたムツゴロウさん。その中でも、青春時代のことを書いた自叙伝4部作のひとつである『ムツゴロウの青春期』は、とても高い評価を受けています。finalventさんは、この作品に何を見出すのか。今この作品を読み返すことに、どんな意味があるのか。

 畑正憲(はたまさのり)と呼ぶより、愛称の「ムツゴロウ」さんがしっくりくる。その愛称で出演したフジテレビ系列局の特別番組『ムツゴロウとゆかいな仲間たち』は、一年に5作ほどの放映だったが、1980年12月29日に始まり2001年3月18日までほぼ20年間、お茶の間に動物と自然の姿を届けた。ムツゴロウさんを動物大好きおじさんだと思う人は多い。

 確かにムツゴロウさんが動物を愛していることは間違いない。しかしいつからか私は、その愛情のなかに、しかたなく形をもってしまった命の叫びのようなものを感じるようになった。偶然、新聞で読んだムツゴロウさんの若い日の逸話も関連している。

 ムツゴロウさんが若い時代、大学院での研究を断念し働こうとしたが、すぐに仕事を失った。そしてたまたま職安の帰り、知り合いの広告代理店の人に会い、医療分野のコピーライターの仕事を勧められた。やってみるととたんに大金が稼げるようになった。どんと詰まれた札束を目の前にした。そうしてみて、お金のためではなく、自分がやりたいことだけしたいとムツゴロウさんは決めたという。

 食うに困るような生活をしてきたのに、お金には代えられないものを選んだムツゴロウさんの原点は、少年期から青年期にあり、『ムツゴロウの青春記』に描かれている。

ムツゴロウの青春記 (文春文庫)
ムツゴロウの青春記 (文春文庫)

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「極東ブログ」で知られるブロガーのfinalventさん。時事問題や、料理のレシピなどジャンルを問わない様々な記事を書かれているが、その中でもとりわけ人気が高いのが書評記事。本連載は、時が経つにつれ読まれる機会が減っている近代以降の名...もっと読む

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