第6回】大志があれば個人でなんでもできるような時代に

テクノロジーの可能性を語り尽くす対談もついに最終回。ソーシャルメディアやクラウドファンディングによって、個人や小さな会社でもできることが広がる時代。世界的な経営コンサルタントであり元原子炉設計者である大前研一さんと現ロケット開発事業者の堀江貴文さんはどんなことを志すのでしょうか。日本の未来を切り拓くには何が必要か、徹底して語っていただきました。

ダメ元だっていい! リスクテイキングができない日本人

大前研一(以下、大前) 現在はシリコンバレーをはじめ、世界に押されがちな日本ですが、意外と新しい流れは、日本が作っている部分もあるんですよ。でも作ったものが普及すると、日本はダメ。日本はね、ミツグくんなんです。

堀江貴文(以下、堀江) ミツグくんですか(笑)。

大前 台灣の鴻海(ホンハイ)(※)にしても、韓国のサムソンにしても、彼らはその日本のやっていることを見ながら、いち早くそいつをモノにして、スピードとスケールで勝負していくから、そのうち日本を凌駕する。一方の日本は、サラリーマンの社長が決めてオタオタしている間に、追い抜いてしまうわけですよね。
※ホンハイ:正式名称は鴻海精密工業。台湾に本社を持つ世界最大の電子機器受託生産(EMS)企業であるフォックスコン・テクノロジー・グループの中核企業であり、アップルのiPhone、iPadをはじめ、DELLやヒューレット・パッカードなどの大手企業の各種パーツのOEM供給、組み立てなどをおこなう。

堀江 でも、僕なんてネットから入ってくる情報しか見ていないんですけど、ある程度それでも世の中の流れってわかっていて。シャオメイ(※)っていう会社が中国にあるじゃないですか。あそこはたった3年で1兆円規模の会社になっているわけですよね。でもこういうのを日本人がやってもおかしくなかったはずなのに、なんでやらなかったんだろうな、と思ってしまうんです。
※シャオメイ:正式名称は北京小米科技。中国の人気スマートフォン「小米」を販売し、3年で企業価値100億ドル達成。CEOは「中国のジョブズ」と呼ばれる雷軍(レイ・ジュン)。



大前 バブル崩壊後の20年の間に日本の胃袋が小さくなっているからじゃないですか。結局、日本の場合は秩序のなかで上層部にいる人には過去の成功体験がありますよね。この成功体験が否定されているのが、いまのデジタル化の世の中ですよね。デジタル化っていうのは、必ずしも先発優位ではない世界です。スケールとスピードが勝負なんです。

堀江 そうですね。

大前 ホンハイなんか会社ができて10年で5兆円規模になって、いまや10兆円の企業じゃないですか。まぁ、アップルのおかげですけどね。そういうスピード感が求められる企業は、サラリーマン経営が向いていないんです。つまり、「グループみんなで決めていかないと」というようなケースですね。私も中国や韓国のいろんな所を見ているけれども、1人の人間が決められる企業のほうが伸びるんです。もちろん、その1人が正しくなければ全部死んでしまうんですけど。ただ、こういうモデルは伝統的な日本の企業は苦手ですね。

堀江 最近は、組織のあり方も変わってきていますよね。たとえば、クラウドファンディングなどソーシャルメディアを使うことも増えている。それによってニッチなハードウェアや小さい会社、あるいは個人でも勝負できる土台ができてきていると思います。

大前 そうですね。

堀江 たとえばOUYA(※)っていうゲーム機がありますよね。この会社もクラウドファンディングで数億円調達してできたわけです。あと、オキュラスリフト(※)っていう3Dのバーチャル・リアリティを楽しめるデバイスを作ったオキュラスVRなんかも、クラウドファンディングで何億円も集めてスタートアップしている。こういったことが可能になっているなかで、日本だろうが中国だろうがアフリカだろうが、そこにアイデアとビジョン、そしてやる気と営業力があれば、もう誰でも流れを作れる時代がきたんじゃないかなぁとは思っていますね。
※OUYA:アメリカのベンチャー企業OUYAが発売したAndroid家庭用ゲーム機。読み方は「ウーヤー」。資金はアメリカのクラウドファンディングサービスの「Kickstarter」によって集められた。
※オキュラスリフト:アメリカのオキュラスVR社が開発した3Dヘッドマウントディスプレイ。バーチャルリアリティ・ゲーム用に開発されている。

大前 その通りですね。いいアイデアがあれば、クラウドファンディングで何億円というお金がすぐ集まります。お金のネックが少なくなったことはもちろん、あとは人材だってクラウドソーシングで同志を世界中から求められますからね。

堀江 それができるようになったのは大きいですよね。僕もロケット開発でやっていて、いろんなところにボランティアがいっぱいいますから。

大前 人材に関してはいろんな会社が出てきてますね。私は「oDesk」(※)というサービスをよく使うんですけど。こちらのことを知らない人でもプロジェクトをつくっておくと、「私にやらしてくれ」っていうメールがきますから。日本という垣根を飛び越えて、大志があれば、だいたい個人でもデキるようになったというのがこの時代の一つの特徴ですね。
※oDesk:インターネット上にて、不特定多数の個人に仕事をアウトソーシングできるサービス。アウトソーシング系サイトでは世界最大規模であり、世界中のフリーランスが参加している。

堀江 おっしゃるとおりです。

大前 それから一人でもメーカーになれる。まさに『MAKERS』の世界ですね。こういう風な傾向もあるので、大企業のほうが優位ではなくなった。だから私は、若い人にそういう希望を持ってもらうためには、新しいその中心地であるシリコンバレーから見えてくる生態系を少しでも理解してもらいたいと思っているんです。そしてその生態系に触れ、よく研究することによって、野心を持ってもらって、自分もチャレンジしてもらうと。別に仮にビジネスが失敗したとしても、この国は最後まで養ってくれる素晴らしい国だから(笑)。

堀江 ダメ元でいいんですよね。

大前 だだ、こういう「ダメ元でいいじゃない」というリスクテイキングのメンタリティが、親や会社や学校にはないんですよね。だからこそ、インドとかイスラエルにいる非常にアグレッシブなメンタリティの人たちと、少しでも接触する機会を増やしたらいいですよね。

シリコンバレーはもはや「アメリカ」ではない

堀江 たしかに。そういうアグレッシブな人たちと接触する機会が足りないのかもしれないんですね。

大前 足りないですね。ちなみに、いまのサンフランシスコのベイエリアの新しい生態系は、アメリカ人だけじゃないんです。つまり、アメリカ人がやらなければ、外国の人たちがそのアイデアをやっちゃうということも含めて、再注目されているんですね。これは非常にいいことで、だから日本も日本のなかでやろうとすると難しいけれども、シリコンバレーの生態系に鼻ぐらいつっこんでおいて、その息吹を感じられるようにしておいたらいいんじゃないでしょうか。

堀江 いま、相変わらずシリコンバレーはすごいことになっているんですよね。

大前 シリコンバレーに行ったらわかりますけど、あの生態系はアメリカ人からもうらやましがられているんですよ。たとえば、私がボストンに行ったとき、東海岸の人が「シリコンバレーはアメリカじゃない。うらやましい」と言っていた。

堀江 どういうことですか?

この続きは有料会員登録をすると
読むことができます。
cakes・note会員の方はここからログイン

1週間無料のお試し購読する

cakesは定額読み放題のコンテンツ配信サイトです。簡単なお手続きで、サイト内のすべての記事を読むことができます。cakesには他にも以下のような記事があります。

人気の連載

おすすめ記事

ケイクス

この連載について

初回を読む
本気のテクノロジーが世界を変える—大前研一×堀江貴文 対談

大前研一 /堀江貴文

世界的な経営コンサルタントであり、オピニオンリーダーである大前研一さんと、『ゼロ――なにもない自分に小さなイチを足していく』(ダイヤモンド社)を刊行したばかりの堀江貴文さんがくり広げる刺激的な対談が始まりました。元原子炉設計者と、現ロ...もっと読む

この連載の人気記事

関連記事

関連キーワード

コメント

Singulith 「日本の場合は秩序のなかで上層部にいる人には過去の成功体験がありますよね。この成功体験が否定されているのが、いまのデジタル化の世の中  〜デジタル化っていうのは、必ずしも先発優位ではない世界です。スケールとスピードが勝負なんです」  https://t.co/eUqHBZ1ZpR 4年弱前 replyretweetfavorite

Singulith 「シリコンバレーはもはや「アメリカ」ではない」 |本気のテクノロジーが世界を変える――大前研一×堀江貴文  https://t.co/eUqHBZ1ZpR 4年弱前 replyretweetfavorite

Barthes2000 “@iimurakazuo: ” 約4年前 replyretweetfavorite

fukuchin666 デジタル化された社会では、必ずしも先発優位ではない。先行者利益などは絵に描いた餅に過ぎないかもしれないんだな https://t.co/s2on9QrKom 4年以上前 replyretweetfavorite